フォロワー数約9万人の「Twitterおばあちゃん」として知られる溝井喜久子さんのツイートからは、生き抜いてきた長い歴史と86才のいまがリアルに垣間見える。
戦後75年目、そして未曽有の感染症や自然災害にも見舞われるいま、改めてしっかり幸せに生きることを考えたい。そんな中で、溝井さんのツイートは生活者の鋭い視点を発信し続ける姿はカッコいい老後のモデルでもある。そこで、溝井さんに「戦争」についてと「Twitter」についての提言を聞いた。
戦争はダメ。命の尊さ以前に生活が壊される
溝井さんは1941年に発足した国民学校初等科(旧尋常小学校)の新1年生として入学。その年の12月8日に太平洋戦争が始まった。
「子供だから深くは理解していませんでしたね。でも、体育の授業は女子が長刀、男子は銃剣術。兵隊を出した家の草むしりなど、勤労奉仕もさせられた。通信簿には勤労奉仕の評価もあって私は優・良・可の“良”でした」
終戦が近づくと空襲も受けた。空襲警報が出ると集団下校し、町を挙げて戦死者の出迎えもしたという。
「機銃照射を受けたこともあります。飛行機が低く飛んで地上の人を撃つ。私の横の地面をバババババって弾(銃弾)が…。いま思えば恐ろしいけれど、当時はそれが日常だったし、それほど深刻な気持ちではなかったと思う。あのとき弾に当たらなかったからいま、こうして生きている(笑い)」
少女だった溝井さんが深く体と心に刻み、いま、ツイートを通じて若い世代に伝えたいことは、観念的な命の尊さではなく、もっと切実なこと。
「戦争中、食べるものも着るものも何もなくなった。当たり前の生活ができないの。それがどんなに悲惨なことか。何より生活が大切。生活がちゃんとできなければ、命だって危うくなるのです。感染症や災害に見舞われているいまは、その脅威が少しわかりやすいかもしれませんね」
生活が壊されるから戦争はダメ。そんな発信ができるのは、子供でも一生活者として戦争を経験したからだ。