番組によれば回転テーブルは中国ではなく、昭和初期に日本で生まれた。明治時代の文明開化でサービスにお金を払うチップの文化も日本に入り、大皿の中国料理を小皿に取り分ける従業員にチップが支払われていた。
しかし昭和5(1930)年の昭和恐慌でチップの文化が衰退し、テーブルに付く従業員が姿を消した。そこで、客が自ら料理を小皿に取り分けやすくするために回転テーブルが編み出された。その後、中国に渡り、今では世界中の中国料理の店で使われるようになった──という解説だ。
回転テーブル誕生とチップ廃止なんて、まさに「ボーっと生きてたら気づかない」結びつき。しかし近代食文化研究会は「いやいや、回転テーブルは18世紀の英国に既にあったんですよ」と指摘する。
「慶應大学文学部教授・岩間一弘氏の編著『中国料理と近現代日本』によれば、回転テーブルは18世紀初頭の英国で使われており、1891年には米国で特許が申請されています。1901年に出版された米国の月刊誌にも、『Lazy Suzan』(怠け者のスーザン)の愛称で何度も登場します。
またチップは江戸時代の風俗を記した書物に何度も登場する日本の伝統文化です。昭和恐慌時に発行された『東京名物食べある記』には、料理の取り分けにかかわらず、洋食屋や中国料理屋では給仕に総額の1割をチップとして払うことが慣例と記されています。そういった意味でチコちゃんの唱える『チップ廃止→日本で回転テーブル誕生説』には疑問符がつきますね」
番組内でギモンを解説した江戸川大学名誉教授・斗鬼(とき)正一氏に聞くと、こう答えてくれた。
「回転テーブルが『Lazy Suzan』の愛称で米国に存在したことは把握していましたが、それが日本の回転テーブル開発に影響したかどうかはわからない。ただ、国内で回転テーブルが普及したのは、番組で紹介されたチップが理由であるほかに、料理を取る際に客の服が汚れないことなど諸説挙げられているんですよ」