中国の鉄道建設プロジェクトを一手に担う国有企業最大手の中国鉄道建設グループは8月16日、同グループトップの陳奮健会長が同日、「不幸にも死亡した」と発表したが、その死因は明らかにしなかった。中国メディアの報道によると、陳氏は腐敗問題で当局の取り調べを受けていたことが明らかになっており、同グループ本社ビルから飛び降り自殺したという。
中国では陳氏のような大企業トップや中国共産党・政府機関の幹部の自殺が年間40件以上発生している。これは他の国に比べて異常に多く、その大半が汚職絡みだが、いったん腐敗容疑で逮捕されると、党籍はく奪や財産没収などのほか、本人はもちろん、一族郎党が糾弾されるなど、社会的にも抹殺される。そのため、追い詰められた末に自殺を選ぶという中国独特の社会的な背景があるようだ。
陳氏は58歳で、同グループの会長、執行取締役、党委員会書記、取締役会委員長のほか、日本の国会議員に当たる全国人民代表大会(全人代)委員も兼務しており、中国では名士中の名士といえる。
同グループは2020年のフォーチュン誌「世界の企業トップ500」ランキングの54位、「世界最大の建設プロジェクト請負業者250社」中3位(19年)、「中国企業500社」でも14位(同)と世界のトップ企業だ。
陳氏の仕事は順調で、死亡直前の13日にも習近平国家主席肝いりの新都心プロジェクトの現場となる河北省の雄安新区を視察するなどしていたという。
しかし、報道によると、6月下旬から国有企業の経営状態などを調査する中国国有資産監督管理委員会の監査が入っており、8月下旬には2か月間の調査が終了する予定だった。陳氏はその10日ほど前の16日に自殺しており、同委の調査結果が自殺の原因とみられている。