中国政府のシンクタンク、中国社会科学院農村開発研究所は中国政府の第14次5カ年計画(2021-2025年)に関する報告書を公表した。報告書によると、同計画の終わりまでに中国で1億3000万トンの食糧不足が発生し、そのうち約2500万トンの穀物不足に陥るとの予測を明らかにした。報告書は、中国では農村人口の高齢化が深刻化し、農民の穀物生産のインセンティブが低下することで、農村開発は多くの矛盾や問題に直面していると指摘している。
李克強首相も5月下旬、全国人民代表大会(全人代=国会)の閉幕後の会見で「中国の平均年収は3万元(約46万円)だが、月収1000元(約1万5400円)の国民も6億人おり、家を借りることすらできない」と指摘するなど、農村部の高齢化に伴う貧困化や食糧不足に伴う飢餓が深刻化していることを明らかにしている。
社会科学院の報告書によると、2025年までに中国の都市化率は65.5%に達すると予測。その結果、8000万人以上の農村人口が都市人口に組み込まれると推定され、農業労働者の割合は約20%に低下するという。
都市化の進展に伴い、農村部の60歳以上の人口の割合は25.3%に達し、約1億2400万人となるが、これは農村部での1億3000万トンの食糧不足という結果を生むことになるとも予測している。なかでも、「多くの人手や労力、肥料、農機具や資金などが必要とされるコメや小麦などの穀物不足は2500万トンと極めて深刻な事態を迎える」とも報告書は指摘している。
世界銀行によると、2017年現在、中国の人口の3.1%が中国共産党の定める貧困基準を下回っており、その数は3000万人を超える。彼らの平均年収は2300元を下回り、月収にすれば200元しかない。このうちの90%以上は農村人口であることが分かっている。これは李首相が発表した「6億人は月収1000元」よりも低い数字だ。