依然としてコロナ禍に苦しむイギリスで、もうひとつの一大事が持ち上がっている。イギリス政府のコロナ対策に不満が噴出しているスコットランドで、再び独立を求める声が高まっているのである。ジョンソン首相は住民投票に反対を表明しているが、最新の世論調査では住民の過半数が独立に賛成している。国際情勢に詳しいジャーナリストMichael Curtis氏がリポートする。
* * *
スコットランド独立運動には長年の歴史が関係している。1320年4月6日、イングランド王国からの独立を表明するアーブロース宣言が発表された。それはラテン語で書かれたもので、なんと17世紀後半まで英語に翻訳されたことがなかった。国際的な重要性から2016年にユネスコの「世界の記憶」に選定されている。
同宣言ののち、1328年にイングランドはスコットランド王国を独立国家と認め、その状態は1707年に連邦法ができて今のイギリスが一つの国家になるまで続いた。初期の連邦制でも、スコットランドは国防、外交、裁判、教育などで独自の権利を認められていた。
スコットランド人は、商取引や海運業に優れ、商人や貿易商として卓越していた。イギリス政府が設立した東インド会社では、1770年代までにスコットランド人は枢要な役職のほぼ半数を占め、土木、軍事、海運などに従事した。獲得した富によって社会的・経済的基盤が安定し、その後は長く、独立運動やナショナリズムは鳴りを潜めていた。
時代は大きく下って1997年、イギリス政府はスコットランドの要求に対し、議会設立、地方分権、国民投票などに同意した。それに基づき、初めて独立に関する住民投票が行われたのが2014年で、結果は44.7%対55.3%で独立派は敗れた。投票率は85%に達した。
しかし、最近の世論調査と選挙結果では、賛否はほぼ反対の割合になっており、独立派が過半数を占めている。理由は様々あるが、コロナ問題に対するジョンソン政権への不満も一因となっているようだ。
独立してEU入りすることを主張するスコットランド国民党(SNP)の人気は高く、前回の住民投票以降、じわじわと勢力を伸ばし続けており、2021年のスコットランド議会選挙では、単独過半数をうかがう勢いである。連邦議員についてはほとんどがSNPで、連邦議会においてもSNPは第3党になっている。彼らは最後までブレグジット(イギリスのEU離脱)に反対した。