元刑事は、定年退職後に用があって所轄の署へ出向いたら、ガランとした署内に警察官の姿もまばらだったという。
「出勤率が低くて驚いた。事件が起きたら、出勤している人間で対処するしかない。あれでは事件処理も遅れ遅れになる」
実際この期間中、逮捕はできるだけ見合わせろというコロナ対策指示が出ていたとも聞く。自宅待機では警察業務はできない。外出自粛だと捜査に出歩くわけにもいかない。
「犯罪者も自粛してくれと思ったね。人が街から消えたことで、スリやひったくりなどの非侵入窃盗は減り、在宅が増えて空き巣などの侵入窃盗も減るだろうが、大きな事件が起きないよう祈っていた」
暴力団の各組には、緊急事態宣言中は事件を起こさず自粛するよう本部から通達が出ていたという。
この緊急事態宣言の時期、警察はもう一つ大きな問題を抱えていた。東京五輪だ。東京五輪が今年開催となれば、警備のため全国から警察官を応援に呼ばなければいけない。開催延期の最終判断が出るまで、気が休まらなかった警察官も多かったはずだ。
今は各署ともほぼ通常業務に戻っているが、感染リスクを抑えるため飲み会禁止は続いているという。また所轄では感染者が出た場合に備えて編成が組まれ、赤坂署など感染者が出た署では、感染者に接触した署員は自宅待機。警視庁本部や機動捜査隊などが応援にきて臨時の署員になり、治安対策のため一定期間働くことになっているという。
警察は自粛を解除したが、“自粛警察”や“マスク警察”はその動きを活発化させている。果たして、元組長が取り締まられる日も来るのだろうか。