高齢者が街なかで、何かに怒っている場面に出くわしたことはないだろうか。あるいは、ネット上で誰かに暴言を浴びせている若者を見たことはないだろうか――。そういった行為に至るには、脳に要因があるという。
人間の思考、人格、理性、創造力、意欲、感情などをつかさどるのが“前頭葉”だ。脳の大部分を占め、ここが損傷・退化すると、感情のコントロールができなくなったり、集中力が低下したりする。
前頭葉が萎縮すると、意欲や感情が抑制され、判断力が低下し、性格の先鋭化が表れる。前頭葉の老化は40代から始まるといわれており、マンネリ化した生活を送っていると萎縮しやすいという。脳神経外科医で認知症専門医の『おくむらメモリークリニック』院長の奥村歩さんだが説明する。
「人間の脳は、前頭葉が発達していて、社会性と言語を持っているのが特徴。人や社会とかかわったときに役に立ち、感謝されたときに最も幸せを感じる“報酬系”という設計になっています。ところが社会的なつながりが少ないリタイア老人や、社会生活が円滑にできず満足感を得られていない若者など、人や社会との関係が希薄で、充実感が得られていない人は、あまり深い思考ができなくなっているため、思ったことをそのまま発してしまうなど、反射的な言葉を発しがち。その要因として、キレる老人には前頭葉の萎縮が、ITやスマホに頼る若者にはストレスや脳過労があるのです」(奥村さん・以下同)
では、脳の若さをキープするには、どうすればいいのだろうか。そこで注目なのが奥村さん考案の「脳に疲れをため込まないトレーニング法」だ。
「下記は37あるステップのエッセンスを5つにまとめたものです。人間の脳がどうして老化するかといえば、正解は“脳のつながりが悪くなる”からです。この5ステップのトレーニングを行うことで、脳を若返らせることができます」
たとえば、ひとつのことに固執して全体が見えなくなる。嫌なことや失敗が頭から離れずマイナス思考になる。いつも疲れていてうっかりミスが多いなどは、脳のつながりが悪くなっているサイン。
案外、思い当たる人も多いのではないだろうか。
「弱い犬ほどよく吠えるといいますが、人間も前頭葉の働きが低下してくると、浅はかな発言で周囲に迷惑をかけることが多くなってくる。若い脳というのは、社会の役に立つ思考ができる、つながりのいい脳のことです」
下の5ステップは、脳をうまく使うための処方箋。これらを実践し、脳の老化を遅らせて、若々しく健康な脳をキープしよう。
もちろん、認知症や脳の老化に大きくかかわってくる生活習慣病にならないことも重要なポイントだ。