都内のカラオケ店で、“香港民主化の女神”の伸びやかな歌声が響いた夜のことを、本誌・週刊ポスト記者は鮮明に覚えていた──。
8月10日、国家安全法違反容疑で逮捕された香港の民主活動家・周庭(アグネス・チョウ)氏(23)は、翌日保釈されるとメディアの前でこう話した。
「取り調べ中、欅坂46の『不協和音』の歌詞がずっと頭の中に浮かんでいました」
15歳から民主化運動に参加し、2014年の雨傘運動で注目を集めた彼女は、アニメを始めとする日本文化を愛し、独学で日本語をマスター。
「現在は政府にパスポートを没収されており、行動にも制限が加わっていますが、彼女は苦しい時はいつも日本の歌を歌って前を向いてきたそうです」(周氏の知人)
そんな周氏の歌声を本誌記者が実際に聞いたのが、昨年夏のある日の夜のことだった。
来日した周氏は、香港デモの民主派側の代弁者として記者会見を連日こなし、帰国前日に本誌記者を含む数人と食事後、二次会でカラオケへ。大好きなアニメソングなどを熱唱したあと、最後に選んだのが中島みゆきの『糸』だった。
アニソンを歌う時の甘い声とは打って変わり、しっとりとした声で歌い上げる。発音も完璧だ。