中国では若者を中心にグルメ化が進んでいるが、「小さなロブスター」と呼ばれるザリガニの消費が急増している。その年間生産量は2003年から2018年の15年間で30倍以上増加して中国全土で160万トンを超え、取り扱うレストランなどの関連産業を含めると数兆円規模のビッグビジネスになっていることが分かった。
その一方で、ザリガニの養殖に必要なため池を作るために、水田や畑などを浸水させることから、地域によっては、コメや麦などの穀物や野菜や果樹の生産量が半減。そのため、今後の中国の食糧安全保障が危機的な状況になることを懸念する声が出ている。
中国農業農村省(日本の農林水産省に概ね相当)傘下の中国農民報などによると、同省は農家の所得向上の手段の一つとして、ザリガニの養殖を奨励しているという。これは習近平国家主席が推進している貧困撲滅による「小康状態(生活するのに不安のない状況)」の実現と密接に結びついている。
ある農民は同省傘下の中国農業科学院の研究者に対して、米の生産からザリガニの養殖に転業したことで、年間所得が倍以上になったと報告している。
同科学院によると、2018年にザリガニの養殖池に使用された110万ヘクタールの土地のうち、75%が水田を転用したものであり、今年の年末に130万ヘクタールまで増加すると予測されている。
特に、中国全体のザリガニの生産量の90%以上を占める湖北省、湖南省、安徽省、江蘇省、江西省の上位5省のザリガニの養殖池の面積は2012年から2018年の間に2.8倍に増加したという。これらの5省を含む揚子江(長江)流域の地域の養殖池の面積の半分は、66万7000ヘクタールもの農地を転用したものであることが分かっているという。