今年8月、グーグルが「スマホを地震計にして世界最大の地震検知ネットワークを作る」と発表したように、災害予知技術の進化がめざましい。しかし、周囲を見渡せば、災害予知のヒントはある。
近年、地震・台風・豪雨などの天災が頻繁に発生しているわが国では、『天災から日本史を読みなおす-先人に学ぶ防災』(中公新書)という本がロングセラーとなっている。これは『武士の家計簿』の著者で歴史家の磯田道史さんが、古文書に残された災害の記録をひもといた一冊だ。
江戸時代の宝永地震が招いた富士山噴火で振動が4日間、降灰が12日間続いたという被害状況や、高知県を襲った巨大津波の際に武士家族が先祖代々の刀を取りに戻って避難が遅れた話など、過去の災害で生き延びた人たちの行動に学ぶ知恵が紹介されている。
なかでも興味深いのは、若き日の森繁久彌の逸話。1946年、徳島県で大津波に遭遇した際、前日に井戸水が濁り、前夜に地鳴りを聞いたなど前兆現象のエピソードが紹介されている点だ。もしもこのときに、避難していなければ、稀代の名優は誕生しなかったことになる。
災害を予知して命を守るもう1つのヒントが、地元にある“災害伝承碑”の場所とメッセージを確認することだ。たとえば、岡山県倉敷市真備町の源福寺に建立された「明治26年大洪水供養塔」という災害伝承碑は、1893年当時の洪水時の水位がこの碑の高さまで上がったことを示している。
「災害伝承碑や市町村の災害史は、地元の過去の災害を調べる絶好の材料です。自分の住む地域のどこに何の危険があるのかを調べ、さらに土砂災害防止法に基づき、全国で約67万か所もある土砂災害警戒区域が近くにないか、地元の役所で配布している最新ハザードマップでチェックし把握するだけでも、命を守る行動につながります」
そう話すのは一般財団法人砂防・地すべり技術センターの研究顧問、池谷浩さん。池谷さんによれば、台風や豪雨、地震が多い日本では、全国どこでも土石流やがけ崩れ、地すべりなどの土砂災害に遭う可能性があるという。