クラスター発生など様々なニュースの影響もあり、すっかり人が少なくなった夜の街だが、新宿などでは相変わらずホストの写真が大きくプリントされた大型アドトラック(広告宣伝車)が何台も走っている。ならば、新型コロナウイルスによる影響は言われるほどではなく、ホストたちの仕事はどうにかなっているのかといえば、そうでもないようだ。ライターの森鷹久氏が、コロナ禍をきっかけにホストを辞めた元売れっ子ホストの本音を聞いた。
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「世の中が変わったと感じましたし、何よりこれ以上続けていくことに耐えられなくなったということです」
新宿・歌舞伎町のホストクラブで、新型コロナウイルスの集団感染、いわゆる「クラスター」の発生が発覚したのは6月のことだった。この時、筆者は複数のホストや関係者に取材をし、そのうち3名が感染者で、1人はその後ホストを辞めた。辞めた彼は北陸地方出身、専門学校へ通う為に上京し、知人の誘いでホストクラブのボーイのバイトを始め、数年前にホストになったという室井陽太さん(仮名・20代後半)だ。室井さんは指名数ランキングで上位を維持する売れっ子だっただけに、意外な決断に見えた。
「3月の真ん中くらいからですかね、客がガクッと減って、マジでやばいよね、という雰囲気になりました。自分含めた店のナンバー(指名の上位ランキング者)はなんとかして客を集めていましたが、若手は相当きつかったと思います。出会い系サイトやSNSで女の子を引っ掛け、消費者金融から金を借りさせてまで店に来させたり、客に高額の売掛け(支払いのツケ)をして脅迫する奴もいました」(室井さん)
こうしたトラブルは、一部は事件化しテレビ報道されることもあったが、ほとんどは表沙汰になっていない。
「ホストも苦しいので、あの手この手で新規の客を呼ぼうとしました。金を借りさせる、風俗で働かせる、というのは定番。当然トラブルになりますが、女性もやましい気持ちがあるのか、被害に遭ったと警察に駆け込んだりはしません。はっきり言って、ホストは女性から金を巻き上げてナンボ、優しい強奪なんです。だからホストをやっていられるし、ホストがこれだけ増えたんです」(室井さん)
今から20年ほど前、まだ今ほどホストクラブが数多く存在せず、世にも認知されていなかった時代にホストになり、現在は都内でアパレル販売会社を営む西山朱雀さん(仮名・40代)が、かつての「ホスト」についてこう解説する。
「あの当時のホストは、お金持ちや経営者の女性の相手をする仕事、という認識でした。男がキャバレーや風俗、クラブに行くようには、女性は遊びに行かないのが普通でしたから、ホスト遊びする女性は特別な存在だったんです。だから、ホストはかっこいいだけでなく、とことんまで客をもてなす。枕(肉体関係)や色恋(恋愛関係)になる、なんてことも少なかった」(西山さん)