愛する伴侶の死をどう見届けたらよいのだろうか。遺族の振る舞いが、様々な波紋を呼ぶことも少なくない。いかにして、遺志を継いでいくか、いかにして遺族の気持ちを尊重するか──。そこには、様々なケースがある。
愛川欽也さん(享年80)の妻・うつみ宮土理(76才)の振る舞いは妻のプライドを感じさせた。
《俳優 愛川欽也は肺がんのため2015年4月15日午前5時11分に永眠いたしました》
《本人たっての希望により、入院はせず在宅での懸命な治療を続けて参りましたが、容態が急変し自宅にて旅立ちました》
マスコミ各社にファクスが送られてきたのは、4月17日。同日午前に都内の斎場で密葬が行われる、まさに直前のことだった。
「愛川さんは亡くなる前月の3月に『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)を突然降板したことで、体調不良が報じられていました。4月15日夕方には“愛川さん死去”の情報が駆けめぐっていて、自宅前には報道陣が集結していたんです。
でも、家は不思議なくらい静まり返っていて、家に誰もいないんじゃないかと思っていたら、17日になって、うつみさんが愛川さんの遺影を抱えて家の中から出てきたんです。まさか家の中で愛川さんが亡くなっていて、その傍らにうつみさんがいたなんて、思いもよらなかった」(芸能記者)
50時間以上もの間、うつみは夫の死を公表せず、ひとりでその亡骸を見守り続けていたことになる。
愛川さんは1956年に養成所で同期だった女性と結婚し、1男1女(俳優・井川晃一と女優・佳村萌)に恵まれるも、1978年に離婚。すると、その翌日にうつみと入籍。「略奪婚」と報じられた。冷たい視線を浴びながら手にした幸せも、綻びが見え始める。
2003年、愛川さんと23才下の女性マネジャーとの愛人関係が報じられ、2007年には44才下の女優との不倫が発覚した。
「愛川さんの不倫報道が出るたびに、うつみさんは報道陣に“こんな仲のいい夫婦はいないわよ。私はこの人を信じている”などと、かばい続けていました。どんなに浮気されようとも、うつみさんには、“自分のもとに戻ってくる”という自負があったんです」(うつみの知人)
夫の闘病中も、その思いは強まっていった。
「愛川さんの自宅療養中も、うつみさんは体調不良報道を頑なに否定し続けていました。本当の病状が知られれば、前妻や愛人が見舞いにやってきて、“ふたりきりの生活”が壊されてしまうかもしれないという思いもあったようです。容体が悪化してからは、愛川さんの介護用ベッドから片時も離れようとしなかった」(前出・うつみの知人)
最愛の夫を、最期まで「自分が守る」という妻としての選択だったようだ。