日本人から見ると、市民の誰でも大量殺戮が可能な銃を買えるアメリカ社会は極めて危険で野蛮に感じる。しかし、アメリカでは建国以来の「自衛の権利」が浸透しており、このテーマは常に政治的課題になる。そのアメリカで今、銃が売れまくっている。過去の大統領選挙ではストラテジストとしても活躍したマーケティング会社CEO、Ned Barnett氏のプロならではの分析は鋭い。
* * *
10年以上前、妻はクリスマスプレゼントとして、アメリカの大手銃器メーカー、スターム・ルガーの株を1株くれた。彼女は子供たちにも、それぞれが興味を持っている分野に関係する企業の株を与えた。すばらしい贈り物だと思った。
1株しかないので、その配当はよくジョークになった。月によっては18セントということもあったが、42セント前後のことが多かった。それでも、「私の会社」が利益をあげていることはわかった。そして今日、私は前例のないものを手にした。5ドル42セントの配当小切手である。これまでの10倍以上だ。
フォーブス誌は最近の記事で、今年6月の銃の売り上げが史上最高を記録したと書いた。ネットニュースのThe Washington Free Beaconは、今年8月には少なくとも160万丁という記録的な数の銃が販売され、これは前年同月の43%増だと報じた。コロナ問題でほぼすべての銃の展示会が中止されているのに、である。
2つの報道によれば、そこには4つの要因がある。コロナ蔓延による社会不安、何百万人もの失業者を生んでいる景気低迷、6月に始まった全米のデモがいまだ止んでいないこと、そして最後に、ジョー・バイデン氏が大統領になった場合、銃規制が進んで銃の購入が難しくなると予想されていることだ。銃を買おうとする人はどんどん増えているが、おそらく彼らは自衛のための武装を認めた憲法修正第2条を支持し、トランプ再選を望んでいる人たちだ。フォーブスは、ルガーの株は2020年に62%上昇し、私の予想を上回る配当が出るだろうと分析している。
ウォール・ストリート・ジャーナルが報じているように、「銃の記録的な売り上げは、デモに伴う暴動に対する国民投票と理解すべきであり、多くのアメリカ人が、警察が自分たちを守るという確信を失っている。初めて銃を購入する人の40%が女性で、全米射撃協会 (National Shooting Sports Federation) の調査によると、今年上半期の黒人に対する銃の販売は58.2%増加している」という現実がある。