安倍晋三首相が辞任を発表したことで、次の政権にはどんな“宿命”が待ち構えているのか。「安倍辞任」を見越していたかのようなタイミングで共著『長期政権のあと』を上梓したばかりの元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏と、政治学者・山口二郎氏(法政大学教授)が緊急対談した。
山口:安倍政権末期は綻びが目立っていたように思えます。特にコロナ危機以降は、「マスクの全戸配布」「学校の9月入学」など、忖度官僚とか官邸官僚と呼ばれる人々が何か思いつきで提案しては失敗し、それを繰り返した。政府としてグリップが効かない状態で漂流していた感じがします。
一方で、私は安倍さんの威を借りながらやりたい放題をする、官邸官僚は官僚組織全体からしたらごく一部だと思うし、次期政権では復元力が働き、従来の官僚組織に戻っていくのではないかと期待しています。
佐藤:官邸官僚と呼ばれる人たちの中でも、今井尚哉・首相秘書官、北村滋・国家安全保障局長、この2人は除外して考えないといけません。
この2人は、世の中で言われるような「安倍家の使用人」タイプではありません。その証拠に彼らは、民主党政権でも一生懸命にやっていました。出世など気にしていないし、ただ政権のため国家のために働くという腹をくくっているから、信頼できる。
官邸官僚が維持できるかどうかは、彼らのような人物が見つけられるかということにかかっています。なぜこう言うかといえば、私自身が事実上の官邸官僚でしたから(笑い)。