長らく再放送が続いていた連続テレビ小説『エール』(NHK)が放送再開されるが、それに伴う注目点がもう1つある。『エール』放送直後に放送されている『あさイチ』(月~金曜)、『チコちゃんに叱られる!』(土曜)の世帯視聴率の行方だ。下がっていた視聴率は回復するのか。民放の裏番組の動向とともに、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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14日、約2か月半ぶりに朝ドラ『エール』の放送が再開します。ネット上には、喜びや期待から、戦時中のシーンが迫っていることへの不安、当初の予定より2週分放送が短くなったことへの嘆きまで、さまざまな声があがっていますが、再開に伴う焦点はそれだけではありません。
約2か月半、『エール』の放送が中断し、第1話から再放送されている間に下がっていた『あさイチ』『チコちゃんに叱られる!』の世帯視聴率が回復するのか? それともこのままジリジリとさらに下がっていくのか? テレビ業界内で密かに注目が集まっているのです。
『エール』が再放送に入る前、『あさイチ』の世帯視聴率は10%台をキープしつつ、13%台を獲得することもありました。しかし、再放送がはじまった6月29日は9.0%に下がり、8月6日には広島平和記念式典で放送時刻がズレたとはいえ5.9%までダウン。その後も6~8%台を記録するなど、時間帯1位を争っていた『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に大きく遅れを取ってしまいました。
土曜朝に再放送されている『チコちゃんに叱られる!』も、『エール』の再放送に入る前の12~13%台から10~11%台にダウン。「ほとんど下がってないのでは?」と思うかもしれませんが、朝ドラは今春から土曜の放送分は一週間の総集編を放送しているため、言わば「再放送(総集編)から、別の形の再放送に変わっただけ」であるにもかかわらず、世帯視聴率が下がってしまったのです。
『あさイチ』の穏やかなムードは貴重
両番組が放送されている時間帯は、民放各局が情報番組でしのぎを削る激戦区。各局のテレビマンに話を聞いたところ、やはり朝ドラの再開には注目しているようでした。
民放の情報番組関係者に話を聞いて、まずはっきりとした傾向が見られたのは、6人中5人が「『あさイチ』はすぐに回復する」と予想していること。『エール』の再放送中も番組内容はいい意味で変わらず、もともと民放各局がワイドショー形式の情報番組で競い合う中、生活情報中心の構成で差別化できているだけに、「再浮上しない理由は見当たらない」という見方だったのです。
また、MCたちによる恒例の“朝ドラ受け”への期待感は大きいだけに、『エール』の再開が視聴率回復をうながすことにつながるでしょう。民放各局の情報番組は、コロナ禍の長期化で重苦しいムードが続いているため、『あさイチ』の穏やかで明るいイメージは、むしろ秋以降、強みとなる可能性は十分ありそうです。
一方、『チコちゃんに叱られる!』に関しては、土曜朝の再放送が10%台後半の高水準を記録していた時期もありましたが、昨秋には10%台前半に留まっていました。加えて今春、「朝ドラの土曜放送が総集編(再放送)になった」ことで再び下がりはじめ、「コロナ禍による撮影中断で第1話からの再放送がスタート」した7月以降はさらに下がっているという背景があります。
そのため、前述した民放の情報番組関係者6人全員が、「番組のパワーがかつてほどはなく、ジワジワと下がっているのではないか」とみていました。「むしろこれまでが盛り上がり過ぎていただけで、現在の数字くらいが普通」「視聴率が下がっても変えずに続けることが大切な番組」という見方もあるものの、再浮上を狙うのであればテコ入れ策が求められる時期なのかもしれません。