コロナをめぐっては、感染者バッシングが大きな問題となった。その背景には、一気に一方向へ向かいがちな日本の世論がある。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、そんな現状の中で、「マスクをつけている人の割合が下がることを期待している」という。
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週刊ポスト9月11日号の『コロナ論』著者・小林よしのり氏との対談では、テレビの凄まじき影響力と「コロナ脳」になってしまった日本人について語り合った。その中では「ネット世論はテレビ報道に批判的なことが多いが、コロナでは珍しく同調した」という話をした。
「原発事故の時と比較し、全国的なイシューになって『自分事化』された人が多い」という理由を私は述べたが、他にもある。
興味深かったのが、本来自由と人権を守ることを重視する左派まで緊急事態宣言の発動を望み、自粛を受け入れたことである。おい、「アベは独裁者」じゃなかったのか? それは「命は経済よりも重い」という考えに従っているわけだが、小林氏は「経済のほうが命よりも重い」と捉えている。日本人の死者が欧米よりも少ないことを根拠としている。
テレビが相当な恐怖を煽った結果、ネット上ではコロナについて差別が蔓延した。初期の頃は、屋形船でタクシー運転手が感染したことから、タクシーが恐怖の対象となった。クルーズ船から下船した高齢者がその後ジムへ行きスプレッダーになったり、千葉の高齢者が羽田から飛行機で富山へ行き、岐阜にバス旅行をした。この頃は「アクティブジジイ・アクティブババア」という言葉が登場し、一気に高齢者叩きが爆発した。
その後は歌舞伎町のホストクラブがクラスターになったことから、若者・水商売関係者が猛烈に叩かれた。山梨県に帰省した若い女性は県内55人目の感染者だったことから「コント55号」にかけて「コロナ55号」と呼ばれ、素性暴きが過熱した。