新型コロナウイルスに感染しているかどうかを診断する検査の中で、ウイルスの遺伝子を検出するPCR検査は最も高精度とされる。だが、日本は検査体制が十分ではないため、発熱しても無料のPCR検査を受けられないケースが多く、自費で検査を受けると数万円かかってしまう。そうした中、飛沫感染のリスクが低くて「偽陰性」も少ない医療保険適用の検査法が登場している。意外に知られていない最新技術を紹介する。
新型コロナ対策では秋以降に懸念される第3波に備え、PCR検査体制の拡充が必須となっている。現在のPCR検査能力は1日あたり最大6万2336件(9月8日時点)。欧米など諸外国に比べて少ないという批判もあるが、厚生労働省は「国によって文化や感染状況などが違うので、単純に検査数だけ比較しても意味がない」と反論する。
PCR検査は、発熱などの症状および感染者との接触歴や海外渡航歴があって感染が疑わしい場合は医師の判断で医療保険適用になり、全額公費負担で受けることができる。この無料検査を都道府県と契約して実施している「帰国者・接触者外来」「地域外来・検査センター」は全国に5194か所(9月9日時点)あるが、感染者との接触歴や海外渡航歴のない人が海外出張など仕事の関係で陰性証明書が必要な場合や軽い症状・無症状の人が「不安だから」という理由で検査を受けたい場合は自由診療(全額自己負担)となり、2万〜4万円ほどかかる。だが、すでにPCR検査は3月から保険適用になっている。保険適用なら自己負担は1〜3割で済むのだから、今後はもっと多くの医療機関で保険適用のPCR検査を受けられるようにすべきであることは論を俟たない。
感染リスクが低く、検査時間は30分以内
しかし、鼻咽頭スワブ(鼻や喉の奥から採取した粘液)を検体とする従来のPCR検査は、高度な訓練が必要な上、鼻咽頭に綿棒を入れて検体を採取する際に患者が咳やクシャミをして飛沫感染するリスクがあるため、敬遠する医療従事者が少なくないという。実際、東京都内のクリニックの医師は「進んでやりたくはありません。もし私や看護師が検査時に感染したら長く診療を休まねばならず、患者さんに迷惑がかかってしまうからです。行政に要請されたら、やらざるを得ませんが」と話す。
この問題を解決する画期的な方法が、唾液によるPCR検査法だ。厚労省は6月に「症状発症から9日以内の者については唾液PCR検査を可能」とした。