同じく学校を舞台にした『人間・失格~たとえばぼくが死んだら』(1994年・TBS系)には、堂本剛が演じる生徒を孤立させ、自殺に追い込む社会科教師・新見悦男(加勢大周)が登場する。
「野島作品には、“実はいい人だった”という救いがなく、本当に嫌われる悪役がいた。政治家や警察の上層部といった“巨悪”ではなく、身近なところにいる悪を最大化させる手法が上手かった」(テレビ解説者の木村隆志氏)
近年のドラマでは、『半沢直樹』の大和田をはじめ、どこか“憎めない悪役”が増えている。木村氏がそうしたタイプの代表として挙げたのは、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(2012年・テレビ朝日系)に登場する東帝大学病院病院長の蛭間重勝(西田敏行)だ。
「温和そうな顔をして、裏切り者はバッサリと切り捨てる冷血漢。主人公・大門未知子(米倉涼子)に積年の恨みを抱いているが、いつも“返り討ち”にされてしまうのがお決まりのパターン。
はじめは憎らしかったのに、“ヘタレ”な面があるから愛されキャラになっていく。こうした描き方の変化は、シリーズものならではの面白さです」(木村氏)
石川氏が“憎めない悪役”として挙げるのは、『下町ロケット』(2015年・TBS系)の水原重治(木下ほうか)だ。
「イヤミな役、ヒール役としてお茶の間の人気者である木下さんですが、大企業・帝国重工の本部長・水原役では、冷徹に人を切り捨てる一方、社長には頭が上がらない人間味がうまく表現されていた」(石川氏)