現在放送中のドラマ『半沢直樹』(TBS系)は、悪役の見本市だ。銀行内の情報を流している裏切り者と判明した紀本平八常務(段田安則)、反発する半沢を徹底的につぶそうとする白井亜希子国土交通大臣(江口のりこ)やその白井の背後にいる“巨悪”の箕部啓治幹事長(柄本明)らの面々が『半沢直樹』の人気を支えている。
「主人公の行動を阻む悪役という障害があり、その立ちはだかる壁を乗り越えていくことで物語が進んでいく。壁が高ければ高いほど、それを乗り越えた時にダイナミズムが生まれてくるという物語論の基本をがっちり抑えているのはもちろん、その壁となる悪役が重厚に描かれている。タイプの違うキャラが次々登場してくるのは、ドラマ作りとして見事だと思います」(メディア文化評論家の碓井広義氏)
しかし何といっても“主役”は大和田暁取締役(香川照之)である。
1作目では、半沢に不正を暴かれ、最終回では頭取の前で屈辱の土下座をさせられたが、今シリーズでは第4話でまさかの“味方”となった。碓井氏は、それゆえに大和田の魅力がいっそう高まったと分析する。
「目的のためなら手段を選ばず容赦しない。しかしそれでいて可愛らしさがあり、人間味がより深まった。単なる私利私欲だけでなく、大和田自身も葛藤を抱えている。そうしたところもしっかりと描かれているので、ドラマに彩りが加わっている」