韓国の人気アイドルグループ「BTS(防弾少年団)」の新曲『Dynamite』が8月31日、米ビルボードのシングルチャート「Hot100」で初登場1位を獲得した。2週目に入っても首位をキープしており、韓国では国を挙げての騒ぎとなっている。人気の過熱とともに、韓国国民の関心を引いているのがその経済効果や徴兵制の問題だ。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。
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韓国人アーティストとして初めて、米ビルボードで2週連続1位の快挙を成し遂げたBTS。1位獲得のニュースが速報で伝えられるとTwitterでは瞬く間に拡散し、8月31日から9月2日までの3日間で関連ツイートは約4600万件に達した。新聞・テレビなどの韓国メディアやケーブルテレビもこぞってBTSの特集を組み、文在寅大統領も自らの公式Twitterで祝賀メッセージを投稿した。韓国政府は2018年、「世界の若者に韓流と韓国語を広げ大衆文化芸術の発展に寄与した」ことを評価し、BTSに「花冠文化勲章」を授与しており、今やBTSは、政府からも功績を認められた国を代表するスターなのだ。
それだけに、韓国では今回の記録的ヒットで“どのくらい儲かったか”が話題になっている。韓国文化体育観光部(部は省に当たる)が9月7日公開した調査によると、今回、BTSが「Hot100」で1位を獲得したことで生み出される経済効果は約1兆7000億ウォン(約1520億円)にのぼる。これは、『Dynamite』のヒットによる所属事務所への直接的な売上のほか、BTSの人気に付随して輸出が増えた化粧品や食料品、衣類などの売上を合わせた金額だ。同部によると、この数字はコロナの影響で海外観光客の誘致やコンサートを開催できない状況を踏まえた試算であるため、今後のコロナの状況によってはさらにすごい経済波及効果を生み出す可能性があるという。
また、BTSの所属事務所のビッグヒットエンターテインメントは、新規株式公開(IPO)を控えており、遅くとも2020年末までには上場を果たす計画だ。このタイミングの『Dynamite』のヒットで、上場後どこまで株価が上がるかが注目される。特に、同事務所の代表で最大株主のバン・シヒョク氏は、メンバー7人にそれぞれ6万8385株を贈与したため、メンバーが手にする具体的な金額にも関心が向けられている。株の公募価格は1株当たり10万5000ウォンを超える見込みとされており、一人当たりが保有する株の価値は、少なくとも71億ウォン(約6億円3000万円)を超える。
過去には、大手韓国芸能事務所のSMエンターテインメントが所属アイドルに一定の株を相場より安く購入できる「ストックオプション」の権利をあげたことがあったが、贈与という形は異例のこと。ビッグヒットエンターテインメントは、ストックオプションではなく贈与の形を取ったことについて、「BTSメンバーとの長期的協力関係の強化及び士気を高めるため」と説明した。
BTSは稼ぐだけでなく寄付も積極的に行っている。9月12日に誕生日を迎えたRMは、誕生日の記念として国立現代美術館文化財団に1億ウォン(約900万円)を寄付。昨年も、聴覚障害を持つ青少年の音楽教育を支援するため1億ウォンを寄付した。美術館やギャラリーでの目撃談が多いRMらしい活動だ。他にも、J-HOPEが今年の2月と8月、母校の子供たちやコロナの影響で経済的に苦しむ子供たちのために1億ウォンずつを寄付したり、SUGAも2月、コロナ感染者が急増した地元・大邱のために1億ウォンを寄付するなど、メンバー各々、稼いだお金を関心のある分野に尽くしている。