女優の室井滋さんが、“ぶっちゃけ寺メイト”の宝林寺住職・千葉公慈さんと対談。新型コロナ、異常気象、経済不安……時代は混沌としているなか、どんな心持ちでこの先の人生を、上を向いて歩いていけばいいのか。室井さんが千葉さんに聞いた。
室井:コロナ禍で、お寺には具体的にどんな相談が寄せられていますか。
千葉:以前はご先祖様の供養やお位牌の種類などに関する質問が多かったのですが、「もしお釈迦様が生きていたら、いまどんな言葉をかけてくださるか」といった、原始仏典に興味を持たれるかたがとても増えました。お釈迦様という人間が裸一貫で人生と向き合い、悟った心の内を言葉にしたのが仏教の始まりです。
室井:先の見えない時代に生きていく上で何が大事かを見極め、自分なりに解釈したいという気持ちなのでしょうね。世の中には膨大な情報が溢れていて、正しくない情報もあれば自分にとって不必要な情報も含まれています。その中から必要な情報を選り分けて本来の自分をキープするのはとても難しい作業ですよね。都合のいい情報ばかり見ては人を批判している人も増えているような……。
千葉:横一列に情報を与えられる時代は終わり、各自が情報の質を見抜くべき時代となりました。ある意味で健全な形ですが、そこで必要となるのが俯瞰する眼差しです。安倍総理が辞任してその功績を称える人もいれば批判する人もいますが、好き嫌いだけで語っているうちは個人の感想です。
もちろん賛否両論あってしかるべきだと思いますが、その前に偏見なくフラットに相手を知ることも必要です。個人の自由な発想や哲学的生き方を持った上で、冷静に情報を精査して世の中を俯瞰する姿勢も持つこと。そうした二重もしくは三重の、重層的な眼差しが求められる時代になってきたのです。
室井:自分の直感と物の考え方、そして世の中をどう見ているのか……。
千葉:その眼差しは人間が自然界でどう他者と向き合っていたかということに答えがあると思います。私個人の体験で言えばヤギの目。あの目を見るのが大好きなのですが、どうしてもこちらの言うことをきいてくれない目をしていませんか?
室井:ヤギって他の動物と違う、変わった目をしていますよね。