菅義偉氏が第99代総理大臣に指名され、新たな時代が始まった。その菅首相誕生の流れを決定づけたのが、細田派(正式名称:清和政策研究会。会長:細田博之元総務会長)や麻生派(同:志公会。同:麻生太郎財務相)といった5派閥の支持表明だった。
昔ながらの派閥政治とそれに伴う猟官運動が露骨に顔を出したわけだが、一方で、自民党内では派閥の力は少しずつ弱くなってきたのも事実だ。何より「無派閥」の菅氏が総理・総裁に就任したことがその証左だろう。自民党職員として多くの派閥領袖と意見をぶつけ合った経験を持ち、現在は政治評論家として活躍する田村重信氏が解説する。
「1988年のリクルート事件によって、安倍晋太郎氏や渡辺美智雄氏といった領袖であり将来の総理候補といわれていた有力議員たちの芽が摘まれました。それまで派閥の領袖が総裁選に出馬するのが慣例でしたが、この事件を機に、領袖ではない人物が総裁選に出馬し、宇野宗佑氏や海部俊樹氏が総裁、そして総理に就任したのです。以後、派閥の領袖の力がだんだんと弱くなってきたのです」
そんな中、やや印象が異なるのが二階俊博氏率いる二階派(志帥会)だ。二階派は今回、最初に菅支持を表明し、菅氏も早々に二階氏を幹事長続投させる意向を示した。「昭和の領袖像を受け継いでいるのは二階氏だけかもしれない」(田村氏)というように、二階氏は他派閥でスキャンダルを起こした議員などを自らの派閥に迎え入れて「数の力」を増していった。