病院内での感染リスクもあるこの時代、少々の不調なら病院に行かずに「家で寝て治したい」と思う人もいるだろう。そんなときに頼りになるのが市販薬だ。とはいえ、ドラッグストアにずらりと並ぶ中から自分の症状に最適な薬を選ぶのは案外難しい。体に合わない薬をのんだら治るものも治らないし、副作用も心配だ。安心して服用できて、しかもきちんと効く市販薬はどれなのか。
実は、多くの医師たちが常備薬として漢方に頼っているという。心療内科医の田中奏多さんが言う。
「胃がもたれたときには『六君子湯』をのむと食欲不振が改善できます。生理痛には『芍薬甘草湯』。普通の鎮痛薬よりも胃に優しく、体に負担がかかりません。心身が疲れたときには、血虚(循環が悪くなる状態)・気虚(身体に必要なエネルギーがない状態)に効く『加味帰脾湯』をのんでいます」(田中さん)
麻酔科医の大西良佳さんも漢方を高く評価する。
「のどが痛いとき、扁桃腺が腫れているときに『桔梗湯』をのむと、すぐに効きます。乾いた咳、のどがイガイガする、痰が切れにくいときには『麦門冬湯』。気道を潤すことで咳を鎮め、痰を出しやすくしてくれます」
のどの痛みを和らげる薬はほかにもある。内科医の近藤千種さんは「市販薬にしかない薬」として『のどぬ~るスプレー』を挙げた。
「病院で出す薬には代替品がなく、対応するとなるとうがい薬になる。風邪でのどが痛いときに、あると非常に便利です」(近藤さん)
常備する市販薬の名前を挙げる一方で、医師らは市販薬だけに頼るのは危険だと口をそろえる。
「風邪の症状なら3日くらい、皮膚の不調なら1週間くらい様子を見て、症状が改善しないようなら病院を受診してください。また、ご飯が食べられるかどうかも1つの目安。1日まったく食べられないような状態なら、症状が重い可能性があります」(近藤さん)