菅政権誕生を決定づけたのは、間違いなく安倍首相の病状説明だった。その無念を引き継ぐのは官房長官として支えてきた菅氏しかいない……世間の同情を引いた安倍氏の病状だが、その後官邸や医師団からの客観的な説明は一切ない。ノンフィクション作家の森功氏が、安倍前首相の病状に関する不自然な点に迫る。
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コース料理にワインまで
今年4月にレクサスLS600hLからセンチュリーにモデルチェンジしたばかりの内閣総理大臣専用車が、駐車場に滑り込む。続いて新聞記者だけでなく、テレビクルーまで現われ、病院に消える総理の姿を見送る。菅後継が決定的となっていた9月12日、そんな光景が19日ぶりに見られた。
前首相の安倍晋三が渋谷区富ヶ谷の私邸を出て、SPや首相補佐官兼政務秘書官の側近、今井尚哉を伴い、東京・信濃町の慶応大学病院に向かう。そこには、報道陣も付いて来る。8月17日と24日に続き今度で3度目。安倍のマスコミを引き連れた病院通いが、なかば恒例のようになっている。
「本年6月の定期検診で、(潰瘍性大腸炎)再発の兆候がみられると指摘を受けました。先月なかごろから体調に異変が生じ、8月上旬には再発が確認されました」
ときに目に涙をためながら話した首相の辞任会見(8月28日)により、同情の声が上がり、内閣支持率は持ち直した。一方、当の安倍は以前と変わらないように忙しく働いている。新聞の首相動静を見る限り、政府関係者だけでなく、外部の有識者との面談もこなしているようだ。
「辞任を決めて吹っ切れたのでしょうか。すっかり元気を取り戻していますよ。9月11日には、谷口(智彦内閣官房参与)さんや鈴木(浩外務審議官)さんたち外務省関係者を呼んで慰労会を開き、コース料理を食べてワインまで飲んでいた」
政府の関係者は異口同音にそう話す。ある関係者はこうも言った。
「実はまだまだやれるんじゃないか、政権を投げ出さなければならないほどの病状ではないように感じます。少なくとも1次政権のときのように10分おきにトイレに駆け込むような状態ではない。コロナ対策の失敗でやる気を失い、菅さんに任せてもう辞めたかっただけなんじゃないか」