秋田の農家出身で、町工場の従業員から総理に上り詰めた苦労人──菅義偉・新首相の「立身出世物語」は庶民に寄り添うリーダー像を期待させた。だが、そのイメージが虚飾に過ぎないと明らかになるまで、そう時間はかからないはずだ。
すでに菅新政権は「経済再生」の名のもとに、国民に厳しい鞭を振るうシナリオを作り上げている。サラリーマンには「定昇廃止」「残業代ゼロ」「クビ切り促進」政策が進められることになりそうだ。
安倍晋三前首相の体調が悪化した今年7月、官房長官だった菅氏が中心になってまとめた経済財政の基本方針「骨太の方針2020」には〈フェーズIIの働き方改革に向けて取組を加速させる〉と盛り込まれた。この「新・働き方改革」は、菅政権の基本方針でもある。
しかし、同じ「働き方改革」でも、安倍政権が賃上げを掲げたのに対し、菅政権の「フェーズII」は逆に“賃下げ”のメニューが満載だ。
実は、これは経団連が今年初めに「働き方改革をフェーズIIに深化させる」(中西会長)と提言した報告書(経営労働特別委員会報告2020)に沿った政策だ。内容は、
【1】毎年、社員一律に給料が上がる「定期昇給」(定昇)の廃止→実質賃下げ
【2】定額の職務給となる「ジョブ型雇用」の導入→給料は上がらずクビ切りがしやすい制度
【3】「裁量労働制」の導入→残業代ゼロ制度
などが柱となっている。