芸能

『半沢直樹』のスピード展開 日本の伝統芸能の型を活用か

幹事長とも対決

 記録と記憶、どちらの面においてもドラマ史に残る作品になりそうである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 視聴率は毎話20%超と人気絶頂。いよいよ大詰めを迎える堺雅人主演のドラマ『半沢直樹』(TBS系日曜午後9時)。まさに「痛快さを絵に描くとこうなる」という展開で、特に後半に一層強く感じられる要素があります。めくるめくスピード感。こんなに速度を実感するドラマがかつてあったでしょうか?

 まるでジェットコースターに乗ったように、走り出したら止まらない。ひたすら座席にしがみついてビュンビュンと肌でスピードを味わうあの感じに似ている。ドラマを見ながらどこかへ連れ去られてしまうような、不思議な心地よさもあります。

 もちろん制作側は四苦八苦してスピード感を出しているのでしょう。例えば脚本。金融用語や状況の解説は、安定した山根基世さんのナレーションに任せ、同時に情報仕込み役としての渡真利忍(及川光博)を劇内に設定し、一手に説明を引き受けさせていく。政治家やライバル会社に翻弄されるメガバンクの複雑な事情について理解するための時間を余分にはかけない。

 同時に、半沢は口をきりっと結び、目を剥き、肩から下は不動のポーズで「負けない、曲げない、まっすぐ走る」という正義の型を示す。そして次々に悪者を退治、また別の難題が立ちふさがり、乗り越えればまた障害物が……と目を離す隙も与えない。ドラマの基本構造「半沢直樹=正義」の図式は決して揺るがず、「勧善懲悪」という骨格もテッパン。基本が安定しているから、複雑な背景になって速度を上げても視聴者はついていける。

 やりとりの応酬はたくさんあっても、くだくだした説明でブレーキをかけることはしない。その意味で、役者中心主義のドラマと言えそうです。

 話題になった名セリフ「おねしゃす」が象徴的でしょう。大和田常務(香川照之)が「おっ…おぅっ…おねしゃす…」とつぶやけば、半沢が「おねしゃす?」と返す。「2文字足りないようです」と畳みかけ、とうとう「おねがいします」と言わせる……こうしたアドリブのやりとりこそ、筋・説明ではなく役者そのものを見る楽しさ。セリフは意味を伝達しているのではなく、まさに言葉の遊び。これぞ、芝居の持つ醍醐味。役者の表情、掛け合い、テンポとリズム、誇張された身体の面白さ、いわば「大げさな遊び」を味わう作品でもあります。

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト