臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は9月16日、新たに誕生した「菅政権」について。
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菅義偉氏が第99代総理大臣に指名され、「菅内閣」が誕生した。菅内閣という文字だけ見ると、あの悪夢のような「菅(直人)内閣」が蘇ってくる。東日本大震災時、あまりの対応の遅さ、対策の不十分さに、何度「この内閣でなければ」と思ったことか。読み方は違えど、文字面が同じ内閣に「本当に大丈夫なのか」と根拠のない不安がこみ上げてくる。
今回の菅首相誕生に際し、私の周りではこんなことが起きた。菅氏の人物像や知られざる逸話を聞こうと思ったのだろう。ある雑誌記者が、「菅氏の友人」という知人に「菅氏について聞かせてほしい」とコンタクトしたが、その知人は「なぜ私の所に?」と訝しんだ。というのも、菅は菅でも菅違い、その知人の友人は菅直人氏だったからだ。おそらく、記者の古い取材ノートにその知人と菅氏のつながりが書かれていたのだろう。麻生太郎副総理兼財務大臣も9月17日、自身が率いる派閥の会合で、新たに発足した菅義偉内閣について「かん内閣」「かん政権」と発言。こうした混乱は今、至るところで起きていそうだ。
「菅内閣」とネットで検索しても、Wikipediaには「菅(直人)内閣」が出てくる。当時は、衆議院議員総選挙で圧勝した民主党が政権を担っていた。鳩山由紀夫内閣の総辞職により2010年6月に発足した菅内閣は、国民からの人気も期待も高かったと記憶している。だが、統治能力と危機管理能力は最悪で、柳田稔元法務大臣の「国会軽視」発言や仙石由人元内閣官房長官の自衛隊に対する「暴力装置」発言など、閣僚の失言・放言も相次いだ。それ以来、野党に政権を任せようとは思えなくなった。振り返れば、あの時の菅内閣は「ピーターの法則」そのものだったと言える。