叩き上げというイメージがある菅義偉・新首相。“庶民に寄り添う”リーダー像を期待させるが、必ずしもそうではない。すでに菅新政権は「経済再生」の名のもとに、国民に厳しい鞭を振るうシナリオを作り上げている。“スガノミクス”には罠があるのだ──。
スガノミクスは高齢者の生活を破壊する。社会保障政策では、団塊世代が後期高齢者になる2022年に向けて、後期高齢者の病院代(窓口負担)を1割負担から2割負担へ実質2倍に引き上げる医療制度改革が進行中だ。
経団連の中西会長が委員を務める政府の「全世代型社会保障検討会議」の結論はコロナの感染拡大で年末に先送りされたが、経団連は「高齢者にも応分の負担を求める」と2割負担への引き上げを主張しており、そう遠くないうちに「病院代2倍」の方針がまとめられる可能性が高い。
一方、介護保険では、今年の制度改革で自己負担の1割から2割への引き上げが見送られ、介護保険利用者や家族はホッと胸をなで下ろした。
だが、経団連は依然「2割負担」を主張しており、財界の意向に忠実な菅政権は次の改革で介護費用倍増に踏み切る可能性がある。
“年金ショック”も起こる。経済アナリスト、森永卓郎氏が指摘する。
「年金制度を維持するために年金額を減らすか、現役世代が払う保険料を上げるかの選択を迫られている。しかし、経団連は企業の保険料負担をこれ以上増やすのは絶対反対。そのしわ寄せは年金受給者に向けられ、支給開始年齢の引き上げや年金減額が行なわれることになる」