日本では、新聞やテレビの新政権「ご祝儀報道」がネットを中心に批判され、有権者をうんざりさせている。菅新首相の過去の政策や言動はほとんど報じない一方で、「女子に赤面するシャイな少年だった」とか「そばを食べるのが早い」など、親しみやすさをアピールするヨイショ記事が目白押しだ。対照的に、アメリカでは政治報道も政治家同士の論戦も激烈だ。大統領選挙ともなれば、少しでも気を抜いたり弱みを見せたりしたら徹底的に叩かれる。真剣勝負である。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は、世論調査でリードを広げる民主党のバイデン氏には隙が見える、と分析した。
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9月17日、CNNの主催で民主党の大統領候補、ジョー・バイデン氏のタウンホール・ミーティングが開かれた。ドライブイン形式で集まった有権者からの質問に答える構成で、コロナ禍の選挙で数少ない市民と直接対話する機会だった。バイデン氏は、富豪の家に育ったトランプ大統領に対して自分は中間層出身であることや、トランプ政権のコロナ対策が株価や企業ばかり気にしていることなどを訴えた。
アメリカに渡って46年、いくつもの大統領選挙を見てきた。戦いのクライマックスはテレビ討論会であり、前哨戦であるタウンホール・ミーティングも重要だ。今回はテレビ討論会は9月29日を皮切りに3回予定されている。
その歴史上の戦いでは数々の名勝負も生まれた。それをきっかけに、それまで積み重ねてきたリードが帳消しになった例もある。例えば、再選を目指したブッシュ(父)氏が若きクリントン氏の挑戦を受けた1992年がそうであった。当時、ブッシュ氏は湾岸戦争に勝利し、再選間違いなしと見られていた。しかし、選挙前に不況に入り、タウンホール・ミーティングでは参加した若者から経済政策について厳しく追及された。ブッシュ氏は「早く終わらないかな」という態度が見え見えで、チラッと腕時計に目をやった。その所作が致命傷となり、そこから流れが一気にクリントン氏に傾いたのである。