歯周病治療でどのような選択をするか、歯を失ってしまった時にどのような治療を選ぶかは、非常に重要だ。保険か自費かを含め、費用が大きく異なる選択肢が示されることもある。それぞれの選択肢で何が異なるのかを患者自身も知っておいたほうがいい。『週刊ポストGOLD 得する医療費』より、ジャーナリスト・岩澤倫彦氏(『やってはいけない歯科治療』著者)がレポートする。
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歯周病は細菌による感染症で、40歳以上の歯を失う原因1位。厚生労働省の調査によると、成人の8割が歯周病だ。
歯周病は、歯肉だけが炎症している状態の「歯肉炎」と、炎症が広がり、歯を支えている土台の骨(歯槽骨)を失う「歯周炎」に大きく分けられる。
「歯肉炎」の段階なら、歯周基本治療であるSRP(※歯石やプラークを除去するスケーリングと、歯石などが付着していた部分を滑らかにするルートプレーニングの略称)と、患者が正しいセルフケアを実践できれば、完治可能だ。
それを放置すると、「歯周炎」に進行して、骨を失う。この段階になると、完全に元のようには治せない。最悪の場合、進行して、歯が抜けてしまう。
歯周病治療の第一人者・スウェーデンデンタルセンターの弘岡秀明院長は警鐘を鳴らす。
「歯周病はサイレントディジーズ(静かなる病)と呼ばれています。歯肉からの出血以外に、痛みなどの自覚症状がないまま、歯周炎に進行してしまうからです。大半の患者は、歯がグラグラ揺れるようになって、初めて歯周病に気付くのです」
治療内容は保険と自費でほとんど差異はないが、治療期間だけは別だ。
保険は治療手順や内容が厳しく規定されている。すぐに治療したくても、1回目は基本的にレントゲン撮影などの診査、診断で終わる。そのため、保険は自費に比べてどうしても治療期間が長くなる。
自費の治療費は保険に比べて高額だが、治療内容に制限がないため、患者の状態に合わせて柔軟に対応してもらうことも可能だ。
基本的な治療で大半の歯周病は治癒するという。
「歯周病治療の質は、SRPを担当する歯科衛生士の知識と技術に左右されます。専門的なトレーニングを受けたスキルの高い歯科衛生士がいるクリニックを選ぶことが重要です」(弘岡院長)
大事な歯を失った時、必ず10年先のことを想定して、治療を選択したい。治療費の安さだけで決めると、次々と歯が抜けていく「抜歯ドミノ」が起きる場合もある。