第99代内閣総理大臣となった菅義偉氏は、官房長官として安倍晋三内閣を支え、新元号「令和」を発表した人としてよく知られているが、初入閣は総務大臣としてだった。そのとき導入されたのが「ふるさと納税」で、使途を指定した納税ができる制度として定着しつつある。ところが、ふるさと納税の種類が多すぎて、一定の共感を集められそうな内容でも苦戦しているものが少なくない。ライターの小川裕夫氏が、SLの車両保存のために設定した世田谷区のふるさと納税が苦戦している現状をレポートする。
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7年8か月もの長期政権が終わりを告げ、新たに菅義偉首相が誕生した。自民党総裁選中、菅氏は総務大臣時代に導入したふるさと納税を地方への取り組み実績として挙げた。
2006年に発足した第一次安倍政権で、菅氏は総務大臣に就任。有識者の議論を経て、翌年にふるさと納税の創設を発表。こうして、ふるさと納税は2008年度からスタートした。ふるさと納税は、”納税”という名称ながら、寄付として扱われる。その寄付の見返りとして、税額控除などの特典がつく制度だ。
制度のスタートからいくつかの紆余曲折はあったものの、ふるさと納税は世間一般にも浸透した。いまやその規模は5000億円にも及んでいる。
ふるさと納税は、豪華な返礼品を用意することで自治体間が税源を奪い合う現象を生んだ。海産物や和牛といった耳目をひく特産品がない自治体からは、不満が噴出。特に、東京の自治体からは反発が根強かった。豪華な返礼品を用意できない自治体は、ふるさと納税では苦戦を強いられることになる。
しかし、そうした逆風でも工夫を重ねた自治体もある。東京都世田谷区も、ふるさと納税のメニューに工夫を凝らした自治体のひとつだ。
世田谷区は使途を明確化することで、ふるさと納税を集めようとした。世田谷区のふるさと納税では、東京五輪でアメリカ選手団がキャンプを実施する予定があった大蔵運動場 の改修資金をはじめとして、テーマを絞ったふるさと納税のメニューを複数揃えた。使途を明確化したことで、自分の寄付したお金が何に使われたのかがわかりやすくなり、それが寄付を呼びこむ効果を高めた。