監督14年目にして川上哲治氏の持つ通算勝利数1066勝を抜き、巨人歴代1位となった原辰徳監督。不滅の「V9」を成し遂げ、“ドン”とまで畏れられた川上監督を名実ともに超えたのか──。
原監督が、さらなる常勝軍団をめざすためには課題も残る、とV9時代に名ショートとして活躍した黒江透修(ゆきのぶ)氏(81)がいう。
「V9の頃は王(貞治)さんや長嶋(茂雄)さんが『ここまで来たのだから優勝しよう』と選手を引っ張っていた。原監督より選手が頑張ればもっと強くなれるはず。
守備力の向上も課題。川上巨人は、サインプレーの種類が豊富で、鉄壁の守備で勝ってきた。原巨人も守備力を徹底して強化すると盤石になります」
川上監督のもとでコーチ兼任選手としてV9の礎を築き、巨人引退後は低迷するヤクルトや西武を日本一に導いた名将・広岡達朗氏(88)は厳しい言葉を送る。
「まずはもっと選手のプロ意識を向上させることです。カワさん(川上)時代、“国鉄の天皇”と呼ばれたカネさん(金田正一氏)が巨人に移籍してきた時、お手並み拝見という態度で接した。ところが、練習に取り組む姿勢も体のケアも想像以上にストイックで、選手はみな影響を受けた。今の巨人軍にそうした雰囲気は感じられない。
巨人はレギュラーシーズンの優勝は当たり前で、日本シリーズで勝って初めてその年の仕事をしたと認められます。昨年のシリーズでソフトバンクに4連敗した原を名将とは呼べません。だから今年の日本シリーズは必ず優勝すること。
そして、巨人の監督を勇退して弱いチームの監督になって、日本シリーズで勝つことです。カワさんができなかったことを達成して初めて、日本球界に貢献したことになる。それでこそ、カワさんを超える名監督になれるのです」
原監督の挑戦は続く。
※週刊ポスト2020年10月2日号