繁華街などでよく見られる客引き行為をする人たち、いわゆる「キャッチ」は、今では多くの街で迷惑防止条例のもと禁止行為とされている。キャッチはたいていの繁華街では圧倒的に男性が担っているが、秋葉原ではメイド姿のキャッチが路上のそこかしこに立っていることでも知られていた。ライターの宮添優氏が、新型コロナウイルスによる自粛を経て、秋葉原のキャッチに起きた変化についてレポートする。
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「コロナの影響か、一時期はいなかったんだけどね。また戻ってきたんだよ…。鬱陶しいったらありゃしないし、あんな年頃のお子さんたちがねえ。親御さんはご存知なのかしら」
東京・秋葉原の中央通りから一本入った路地に佇み、ため息混じりに話すのは、近くで飲食店を営む本城徹さん(仮名・50代)だ。視線の先には、電気店や飲食店といった営業中店舗の電飾が輝いているが、新型コロナウイルスの影響で街には完全に人は戻らず閑散としている。だから目立つ、のかもしれないが、数メートルおきにメイド服や高校生風の制服をまとった女性が立っている。
「全員、ガールズバーやリフレの従業員で、客引きとして街頭に立っているのです」
彼女たちがいわゆる「キャッチ(客引き)」であると指摘するのは、大手紙の警視庁担当記者。新宿・歌舞伎町や台東区上野の繁華街同様に、秋葉原エリアを擁する千代田区の条例でもキャッチは禁止されているはずだが、取締りに当たる管轄警察署などの指導や警告に従わず、彼女たちの行為は日々エスカレートしてきたという。
「本当は声かけも法に触れるのですが、客の手を引っ張る、体を触る。中には胸や下半身を見せるなどして勧誘する場合もありました」(警視庁担当記者)
特に秋葉原で目立つのは「リフレ」と称して運営している営業店である。リフレは足つぼマッサージの一種であるリフレクソロジーの略で、他にも肩もみ専門、耳かきなどの身体接触のあるサービスを、メイドなどのコスプレをした女性が提供するのが秋葉原の定番だ。もちろん、きちんとした資格取得者によるサービスを男女ともに提供する、施術者がコスプレしているだけ、という店舗もある。しかし逆に一部店舗では、法に触れる性的サービスを提供したり、身分を詐称した女子中高生が働いていたことも発覚。そうした店は摘発もされた。前出の本城さんがいう。
「コロナで、彼女たちがいなくなって本当にホッとしていたんだ。店にくる人たちも、キャッチが多すぎるし、怖くて店に入れないといっていた。ところが8月の終わりころからまたいるんだ。しかも、私が通勤のために通っても声をかけてくる。以前は近所の店のおじさん、と理解してくれていたけど、新しい子が入ったのか、なりふり構わずやっているのか……」(本城さん)