故人から受け継ぐ財産にかかる相続税。“相続税対策”は生前でないと意味がないのでは……と思う人もいるかも知れない。しかし、被相続人の死後に行なえる対策もある。最も効果があるのが「配偶者の税額軽減」だ。
元国税調査官で税理士の松嶋洋氏が解説する。
「配偶者は課税相続分のうち法定相続分もしくは1億6000万円まで無税で相続できます。この控除の適用を受けるには、税務署への申告が必要です」
ただし、大きな額の控除だからこそ、使うにあたっては注意が必要だ。
「相続税がかからないで済むからといって、配偶者が大きな額を相続すると、配偶者の死去後の二次相続で、子供に多額の相続税がかかるリスクがあります」(前出・松嶋氏)
土地や自宅の相続には、「小規模宅地等の特例」を活用したい。夢相続代表で相続実務士の曽根惠子氏が指摘する。
「被相続人が亡くなる直前まで住んでいた330平方メートル(約100坪)までの土地を、配偶者や同居する子供等が相続する場合、評価額の8割が減額される特例のこと。
そもそも“相続税のために自宅を売却しなければならない”といった事態を避けるためにできた制度です。評価額4000万円の土地を800万円の評価で相続でき、節税メリットが非常に大きい」
特例を上手に利用すれば、残された配偶者が亡くなり、子供だけが相続人となる二次相続の負担を避けることができる。
「例えば660平方メートルの家を同居する妻と子供が相続する場合、子供が特例を使って330平方メートルを8割減で相続し、妻が配偶者の税額軽減を使って残りを無税で相続します。その後、妻が亡くなった際にもう一度子供が特例を使って330平方メートル分を相続すれば、特例を二重で使えます」(前出・松嶋氏)