すらりとした8等身に、人懐っこい笑顔が浮かぶ。女優・観月ありさ(43)は、29年間、連続テレビドラマの主演を毎年演じている。その記録はいまだ更新中だ。
4歳でモデルデビュー。小学生から徐々に軸足を女優業に移してきたが、役者仕事に苦手意識があった。
「『おもしろくもないのに笑えない!』って、周囲の大人たちを困らせていましたね(笑い)」
今の彼女からは想像ができないが、当初のキャッチコピーは「笑わない少女」。演技の仕事になかなか馴染めず、戸惑いがあった。
転機になったのは、1996年の主演映画『7月7日、晴れ』の完成披露試写会。登壇した観月は、感動した観客に万雷の拍手を贈られた。自分の演技に対する直接的な反応を目にしたのは、それが初めてのことだった。
翌年、代表作の一つ『ナースのお仕事』(フジテレビ系)に主演。ドジだが明るく前向きな新人ナース・朝倉いずみ役は、シリーズ化や映画化されるほどの当たり役となった。
「いずれも役に対する反響がすごかったんです。この頃から、お芝居に前向きになり、演じる役柄を通して自分を表現しようと心がけるようになりました」
現在、ドラマ『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)に出演中。強く明るい女性役の多い観月だが、今回は息子の嫁をあの手この手でいじめ抜く老舗和菓子店の女将を演じている。長いキャリアのなかで初の悪役。迫力のある低い声や不敵な笑み、不気味さの漂う囁くような歌声が、女優・観月のこれまでにない新たな魅力を引き出している。