美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏とタレントの壇蜜という、日本美術応援団の2人が、日本の美術館の常設展を巡るシリーズ。今回2人は「岡本太郎記念館」を訪れた。
山下:庭にあるこの鐘、木槌で鳴らしてみませんか。
壇蜜:(カーン……)高く澄んだ、心地のいい音。鳴らす場所で音色も違います。
山下:梵鐘『歓喜』は名古屋・久国寺の依頼で1965年に制作されたユニークな鐘で、熱烈な太郎ファンで親交のあった石原慎太郎さんにも1つ贈られています。
壇蜜:鑑賞するばかりでなく、作品に肌で触れて作家の感性を感じられるのは特別な体験です。岡本太郎記念館では自由に作品の写真が撮れるのもファンとして堪りませんね。ショップでは館内で出会った作品が愛らしいグッズになっていて興奮してしまいます。
山下:ショップのいちばんの売れ筋は書籍。《自分の中に毒を持て》など、太郎の遺した言葉は作品と共に今も、21世紀に生きる私たちの心へ問いかけてきます。
壇蜜:足跡を直に感じられる場があるから、影響も広がり続けるのでしょう。
山下:ロックバンドのOKAMOTO’Sは岡本太郎がその名の由来ですし、田島貴男や一青窈、あいみょんなど、太郎が心に住み着いたアーティストは少なくない。僕も30代でのめり込み、教えを請うた。太郎との出会いがあって今の自分があると思います。肉体はなくなっても岡本太郎は現在進行形なんですよ。
壇蜜:今なお人々に寄り添いながらそれぞれの心の中に根を張り、やがて人生の選択肢のひとつともなっていく──。「岡本太郎」とは大いなる存在ですね。