米連邦最高裁のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が87歳で死去したことを受け、後任人事をめぐり与野党とトランプ大統領の動きが激しくなっている。最高裁判事の任期は終身で、最高裁の判断はアメリカの基本制度や憲法、法制、市民生活に大きな影響を与える。ある意味では、任期4年の大統領より重大な人選である。リベラル派の象徴だったギンズバーグ氏の後任に、どんな人物が就くのか。大統領選挙の焦点にも浮上している。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が水面下の駆け引きをリポートする。
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ドナルド・トランプ大統領は19日、後任人事について、ツイッターで「遅滞なく進める国民への義務がある」と書いた。週末にも女性を後任に指名するつもりのようである。さらにツイッターで、「我々は誇り高く自分たちを選んでくれた人たちのために決断をするべく、この重大な権力の地位に就けられた。かねて最高裁判事の選考は特に重大な決断だとされてきた」と、かなり大仰な言い方をしている。
もちろん、大統領選挙を目前にした発言だけに、文面通りに受け取るわけにはいかない。筆者の長い友人で元民主党コンサルタントだったK氏はこう分析する。「トランプは、大統領選に負けるという恐怖に襲われている。眠れない夜を過ごしていることだろう。このタイミングで最高裁判事の後任指名を急ぐのは、指名によって上院で承認のための審議が始まって、そちらに有権者の注意を引き付けられるからだろう。大統領選挙と並ぶ国の重大事だから、メディアは毎日このプロセスを報道し、大統領選挙報道はいくらか減ることになる。現状不利なトランプにしてみれば、作戦を立て直すための時間稼ぎになる」。
選挙のためには何でもありとはいえ、これはやはり禁じ手なのだ。「これまで、政治の不文律として、大統領選挙の年は、最高裁判事の交代はしないというしきたりがあった。これは、任期満了が近い大統領が後任指名することは、次の政権(たとえ再選であっても)の重大な権限を先取りすることになる、という考えからだ。トランプがやろうとしているのは、史上まれなアンフェアな行為だ」とK氏は言う。