1948年に制定された日本の大麻取締法は、無免許の大麻取り扱いを禁止する法律であり、使用については罰則がない。これは幻覚作用を引き起こす物質が、麻製品産業に関わる人や、七味唐辛子などに使用される成熟した種子からも検出されるため、幻覚が目的の薬物乱用者と混同しないためのものだ。中毒者についてはちゃんと対処する法律があるのだが、そこには目を向けず、有名人が大麻で逮捕されると「意味がない法律でまた逮捕者が出た」「早く大麻を合法化すべき」といった声がSNSをかけめぐる。それと同時に、大麻は他の薬物とは違うといった、奇妙な選民意識も見せつける。伊勢谷友介の逮捕でまたしても強くなった、彼らの「大麻は特別」とはいったい何なのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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俳優・伊勢谷友介が大麻所持で逮捕された。一般人からこの事件をみると、NHKの大河ドラマや民放の人気ドラマに出ていた現役俳優が薬物を使用していた、というように映り、国民の間に「衝撃が広まった」とも言えるのかもしれない。他方、伊勢谷のファン……もとい、伊勢谷の言動や理念に共感するという人たちの間では、伊勢谷に対する信頼が深まり、伊勢谷の言っていたことが「真実では」というような声すら上がる。一体どういうことか。
「ションベン(尿検査)でシャブ(覚せい剤)とかコーク(コカイン)が出てきたらガックリきてたと思う。でもやっぱり、クサ(大麻)だけだったでしょう? 伊勢谷さんの動画見ました? ナチュラル(自然)に囲まれて、青空の広がるベランダでチル(大麻の吸引)。傍らには可愛い彼女……マジな幸せの形。金じゃないです、伊勢谷さんは」
スマホの向こう側で「それ見たことか」と言わんばかりに食い気味に、まくし立てるように主張する男性・近藤孝仁さん(仮名・40代)とは以前、危険ドラッグの取材を通じて知り合った。大麻の所持や売買で前科三犯、現在は家族ができて「(大麻は)スッパリやめた」というが、大麻自体を決して否定しない。いや、否定するどころか、伊勢谷のことを擁護する。
「大麻は自然のもの、依存性だって酒やタバコより低い。海外では病気の治療にだって使われる。大麻の薬効成分で体がダメになるというより、大麻で捕まった際の社会的影響によって人生が狂うとも言われましたが、これが真実でしょう。大麻の有効性が知れ渡ると困る人たち、支配層がいる。金持ちの下に病院や警察がいて、大麻を取り締まる、全ては金儲けのため」(近藤氏)
実際、伊勢谷は自身のSNS上に「大麻で人生崩壊するのは難しいと思うけどな。それならお酒の方が簡単だ」と、大麻を擁護し、酒の危険性を訴えるような書き込みを残している。伊勢谷と近藤氏に通じるのは「大麻使用は悪くない」という本音であろう。ちなみに、依存症に詳しい筑波大学教授の原田隆之氏は9月10日付のYahoo!ニュース個人での寄稿において、薬物依存については使用パターンや頻度、量、摂取する人が若年層かどうか、といったことによって危険度は大きく違ってくるので、「薬物同士を比べてどれがより安全であるといった議論はナンセンス」と指摘している。