国内

伊勢谷逮捕で「大麻は特別」と主張強める一部ネット民の誤謬

伊勢谷友介逮捕で大麻擁護論者がネットで勢いづく(時事通信フォト)

伊勢谷友介逮捕で大麻擁護論者がネットで勢いづく(時事通信フォト)

 1948年に制定された日本の大麻取締法は、無免許の大麻取り扱いを禁止する法律であり、使用については罰則がない。これは幻覚作用を引き起こす物質が、麻製品産業に関わる人や、七味唐辛子などに使用される成熟した種子からも検出されるため、幻覚が目的の薬物乱用者と混同しないためのものだ。中毒者についてはちゃんと対処する法律があるのだが、そこには目を向けず、有名人が大麻で逮捕されると「意味がない法律でまた逮捕者が出た」「早く大麻を合法化すべき」といった声がSNSをかけめぐる。それと同時に、大麻は他の薬物とは違うといった、奇妙な選民意識も見せつける。伊勢谷友介の逮捕でまたしても強くなった、彼らの「大麻は特別」とはいったい何なのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 俳優・伊勢谷友介が大麻所持で逮捕された。一般人からこの事件をみると、NHKの大河ドラマや民放の人気ドラマに出ていた現役俳優が薬物を使用していた、というように映り、国民の間に「衝撃が広まった」とも言えるのかもしれない。他方、伊勢谷のファン……もとい、伊勢谷の言動や理念に共感するという人たちの間では、伊勢谷に対する信頼が深まり、伊勢谷の言っていたことが「真実では」というような声すら上がる。一体どういうことか。

「ションベン(尿検査)でシャブ(覚せい剤)とかコーク(コカイン)が出てきたらガックリきてたと思う。でもやっぱり、クサ(大麻)だけだったでしょう? 伊勢谷さんの動画見ました? ナチュラル(自然)に囲まれて、青空の広がるベランダでチル(大麻の吸引)。傍らには可愛い彼女……マジな幸せの形。金じゃないです、伊勢谷さんは」

 スマホの向こう側で「それ見たことか」と言わんばかりに食い気味に、まくし立てるように主張する男性・近藤孝仁さん(仮名・40代)とは以前、危険ドラッグの取材を通じて知り合った。大麻の所持や売買で前科三犯、現在は家族ができて「(大麻は)スッパリやめた」というが、大麻自体を決して否定しない。いや、否定するどころか、伊勢谷のことを擁護する。

「大麻は自然のもの、依存性だって酒やタバコより低い。海外では病気の治療にだって使われる。大麻の薬効成分で体がダメになるというより、大麻で捕まった際の社会的影響によって人生が狂うとも言われましたが、これが真実でしょう。大麻の有効性が知れ渡ると困る人たち、支配層がいる。金持ちの下に病院や警察がいて、大麻を取り締まる、全ては金儲けのため」(近藤氏)

 実際、伊勢谷は自身のSNS上に「大麻で人生崩壊するのは難しいと思うけどな。それならお酒の方が簡単だ」と、大麻を擁護し、酒の危険性を訴えるような書き込みを残している。伊勢谷と近藤氏に通じるのは「大麻使用は悪くない」という本音であろう。ちなみに、依存症に詳しい筑波大学教授の原田隆之氏は9月10日付のYahoo!ニュース個人での寄稿において、薬物依存については使用パターンや頻度、量、摂取する人が若年層かどうか、といったことによって危険度は大きく違ってくるので、「薬物同士を比べてどれがより安全であるといった議論はナンセンス」と指摘している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン