芸人として一世を風靡したヒロシ(48才)がいま、登録者数93万人を超える大人気YouTuberとして再ブレークしている。配信内容はひとりでキャンプを楽しむ“ソロキャンプ”。コロナ禍で人に会えないことに不自由を感じたり、孤独を感じたりする人が増えている中、「好きなことをするのに“ひとりはダメ”ってことはない」と語る。そんな“ヒロシ流”の、ひとりを楽しむ極意とは──。
少年時代からキャンプなどの“冒険”が好きだったヒロシが、お笑い芸人になりたいという思いを募らせたのは学生時代のこと。大学を卒業して就職したが、夢をあきらめ切れず、会社を辞めて福岡で芸人デビューした。
「テレビを見て、“おれの方がおもしろい”なんて思う人生を送りたくなかったんです。人のやることに文句をつけるくらいなら、自分で挑戦しないとカッコ悪い。でもぼくの地元では当時、芸人になるということは、人の道から外れることに近かった。親にも反対されました。それでも、“芸人やっときゃよかった”と思って死にたくはなかったんです」(ヒロシ・以下同)
しかし、なかなか芽は出なかった。26才で心機一転し、上京。アルバイトやホスト業で食いつなぎながら、芸人への挑戦をあきらめなかった。そして2003年、『エンタの神様』(日本テレビ系)で、「ヒロシです。」と語った後、自虐的なせりふでオチをつけるおなじみのネタで注目されるようになり、その後2年で大ブレークを果たす。
お笑い芸人として売れるまでは、少年時代に夢中だったキャンプからも離れていた。
「売れていなかった頃はお金もないし、キャンプはやりませんでした。ネタを作るか、アルバイトをするか、どうしたら売れるのかしか、頭になかったですね」
30才を過ぎ、念願の売れっ子になったものの、別の苦労が待っていた。
「テレビで売れて、たくさんの人が近寄ってきました。でも、自分はもともと極度の人見知り。芸人仲間に誘われても、集団の中でどう振る舞っていいかわからず、ひとりで所在なく過ごしていました。テレビ局のエレベーターは特に苦痛。著名人と一緒になろうものなら、緊張のあまり何も話せず、気まずい雰囲気を作ってしまうんです」
そういった事情を知らない人に誤解され、「天狗になっている」などの悪口がささやかれるように……。そのうち、収録の前日は眠れず、テレビ局に近づくと体が震え出すなど、精神的に追い詰められていった。そしてついには、自宅マンションのベランダから飛び降りようとしてしまう。幸い踏みとどまれたが、パニック障害の診断を受けた。