誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、競馬新聞の考察を繰り返してきた末にたどり着いた、新聞予想の勝率についてお届けする。
* * *
引き続いての競馬新聞検証である。勝ち馬にはどんな印が付いていたかを振り返った。やはり◎や〇が多いのか。▲や△はどうか。何人のトラックマンが印を打っていたのか。ある1紙に絞り、土日の全72レースでやってみた。
なんとも面倒な作業(たっぷり3時間かかった!)に、いかなる意味があるのか。分からないままに表を作る。日曜日の夜、終わったレースを顧みるのは寂寥感が漂うものの、決めたことをシコシコと実行するのは案外面白いのだった。
何かしらの印で全部の欄が埋まっていたのは26レース。トラックマンが12人だとして、その全員が◎やら▲やらを打ち、欄に「…」がないということ。ここに「1人落ち」を加えると実に43レース。プロは勝ち馬をそうは見損なわない。
誰かしらが◎を打っているのは58レース。◎の総数は134、〇が145。総票数816だから「本命対抗打率」は3割4分。▲の104を加えると4割7分。こうして見ると立派である。
では空振り具合はどうだろう。
「…」が半分以上ある場合をスカとすると(まさに欄がスカスカしてる)、10レースあった。そのうち完全スカ(誰も何の印も打ってない)は1レース。こういうのを「画龍点睛を欠く」とでも言うのか(ちょっと違うかな)。とにかく紙面責任者には痛恨であろう。ちなみに完全スカは小倉の3歳以上1勝クラス、牝限定の芝1200メートル。13頭中10番人気馬だった。普通は振り返らずに次の検討に向かうところなのだろうが、私は見逃さない。寂寥感を味わったおかげである。