アメリカのトランプ大統領は、焦点となっていた連邦最高裁判事の人事で、人工中絶に反対するなど保守派が歓迎する48歳女性判事を指名する方針を明らかにした。リベラル派の後任に保守派を就けるという強引さに加え、候補となった判事の過去の言動なども物議をかもしている。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。
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がんで死去したリベラル派のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の後任に指名されることになったのは、第7巡回区控訴裁判所のエイミー・コニー・バレット判事で、早くから保守派の女性判事ということで予想された候補の一人だった。今後、上院がバレット判事を承認すれば、最高裁は当面、保守派6人、リベラル派3人の構成になる。公平を欠くと国民が反発するのも当然だろう。
大統領が指名した判事候補は、上院の司法委員会が審査して本会議の採決にかけるかを決定し、本会議で過半数の賛成があれば承認される。司法委員会は3~5日の公聴会を開いて指名候補を審査する。現在、上院(定数100)は共和党が53議席で多数を占めており、そのなかには大統領選前に最高裁判事を決めるべきではないとして承認に反対する議員もいるが、すでに承認に必要な51人の票は固まったとされる。
最高裁判事は終身制で、仮にトランプ氏がホワイトハウスを去ることになっても、国の重要課題に長く関わることになる。それだけに、リベラル派と保守派のバランスを取るのが不文律であり、トランプ氏のように、4年の任期中に3人も続けて保守派を指名するというのは異例中の異例だ。また、2000年の大統領選挙では、共和党のジョージ・ブッシュ氏と民主党のアル・ゴア氏との戦いが選挙で決着がつかず、最高裁まで争われたこともある。バレット氏が即座に承認されれば、11月3日の大統領選挙の結果についても、6対3の最高裁が審理する可能性がある。世論調査では、6割以上のアメリカ人が「新しい判事は新しい大統領が指名すべき」と答えている。トランプ氏による指名に賛成しているのは2割程度しかいない。国民が何を望んでいるかは明らかだ。