東北では新米の収穫が始まるこの季節、酒造りもいよいよ本番だ。そこで、宮城県で愛される日本酒を、地元アナウンサーが紹介する。
正徳2(1712)年創業の大沼酒造店は、銘柄「乾坤一(けんこんいち)」で知られる蔵元だ。明治3年、蔵を視察に訪れた初代宮城県知事が「乾坤一擲(けんこんいってき)」にちなんで命名した。宮城テレビ放送の白壁里沙子アナは、就職して宮城に住むまで日本酒を飲んだことがなかったと話す。
「でも今では日本酒が大好きになりました。就職した年、父にプレゼントしたお酒は『乾坤一』。私にとって思い出深いお酒です」
10月から17代目当主を引き継ぐ大沼健氏は、酒蔵の内部を案内しながら、酒造りの工程を説明してくれた。江戸後期に建てられた酒蔵は東日本大震災で被害を受け、大規模な修復工事を行なった。酒米全体の8割は宮城県産を使い、宮城県で誕生したササニシキ、その父のササシグレでも醸造する。
「最近は機械技術が進歩していますが、それに頼っているだけでは個性が出ません。例えば仕込んだもろみの状況やその日の気温に合わせて、細かい調整が必要になってくる。私たちが目指すのは、最後まで飽きずに飲める食中酒。すっきりとしてキレが良い酒を目指しています」と大沼氏。