テレワークの普及などにより、郊外やリゾート地の一戸建て・マンションが売れているという。もちろん、都心部へ通勤の必要がなくなれば、自然に恵まれた場所でのびのび暮らすライフスタイルも選択肢のひとつだが、「決して早まってはいけない」とアドバイスするのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。
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最近、不動産業界でよく聞く話は、「戸建て住宅が売れ始めた」「湘南や九十九里への住み替えが目立つ」「郊外型大規模開発が見直されている」など。知り合いの仲介業者が販売していた千葉の奥地にある約100坪の土地も、「買い手がついた」と連絡があったので、少し驚いた。はたまた、栃木県の那須塩原や福島県の猪苗代あたりの別荘もよく売れているらしい。
新築マンションの市場でも、郊外の大規模開発物件に注目が集まっているという。しかも、これまで販売不振が顕著だった場所も含まれている。駅から15分前後も離れたこういった物件は本来、築10年で資産価値が半減する危険性を宿しているので、私は決してお勧めしてこなかった。
テレワークが定着したことで、毎日会社へ行く必要がなくなった人が一定数生まれたのは厳然とした事実だ。通勤する必要がないのなら、ゴミゴミした都会ではなく自然の豊かな郊外や海辺に住もうと考えた人々が住み替えを始めたのだ。
これによって、今まで見向きもされなかった遠隔郊外の中古戸建や前述のような土地、それよりもさらに遠いリゾート地の別荘などが急に売れ始めた。
しかし、実際にはテレワークがうまく機能している企業や組織と、それほどでもないところに分かれるようだ。それぞれの企業の業態や仕事の進め方、リーダーや働き手たちの価値観や向き不向きによって、実施状況にバラツキが出ている。
チームプレーが必要な業種でテレワークを行うには、ネット上でよほど円滑なコミュニケーションが取れないと、出社体制を超える結果を出すのは難しい。逆に、私が接することが多い出版社のように、個人プレーの多い業種はテレワークでもほとんど支障がなさそうに見受けられる。
さらに言えば、優秀な組織やビジネスマンほどテレワークに適している。いまだに昭和的価値観から脱却できないリーダーが率いる組織は、テレワークへの移行がぎくしゃくしているようだ。
このように業種や働き手たちによってテレワークの浸透具合はまだら模様になっている。ただ、テレワークという業務システム自体は、経営側にも働き手たちにもメリットが大きいことは確か。ウインウインなのだ。だから今後は、試行錯誤を続けながら拡大していくのではないだろうか。