国際情報

「トランプは白人至上主義者だ」は、さすがにフェイクだ

政治報道が偏向するのは世界共通なのか(CNP/時事通信フォト)

 トランプ大統領とバイデン氏による初のテレビ討論から一夜明け、アメリカでは各メディアがその分析と総括をしているが、日本の大新聞やテレビがそうであるように、アメリカでも大メディアのバイアス(偏向)は避けられない。日本でも報じられた「トランプ氏の白人至上主義発言」に対し、ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は異議を唱える。

 * * *
 昨夜は、トランプ氏とバイデン氏のテレビ討論中継を見て、夜中に原稿を書き、明け方に床に就いた。昨夜リポートしたように、二人の討論は不毛で中身が薄く、筆者にとっても後味の悪い夜だった。

 そして今朝、各メディアの報道を見て、また暗い気持ちになった。日本にいた少年時代から尊敬し、実際にコラムニストや記者たちと交流してきた(それがアメリカに渡る大きなきっかけになった)ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストが、こんな偏った報道をするのか、と怒りを禁じえなかったからである。両紙はほとんど同じ内容を報じているので、ニューヨーク・タイムズを紹介する。

《トランプ氏、過激派白人至上主義者グループを非難、排斥せず 共和党は大統領と距離を置く
(中略)
 人種差別的な過激主義が議題となり、バイデン氏が、白人至上主義と暴力行為に関連した組織「プラウド・ボーイズ」を非難するようトランプ氏に迫ったところ、トランプ氏は組織に対して、「後ろに下がって待機していなさい(stand back and stand by)」と呼びかけた。これは事実上の支持表明と捉えられる。》

 いくらなんでも無理がある。この発言だけで白人至上主義グループを支持したことになるとは筆者には思えない。確かに筆者も、トランプ氏は白人至上主義者ではないかと疑ったことはある。特に移民に関する発言には、特定の人種や民族に対する差別意識がにじみ出ていることがよくある。感情的には、そうした人々のことが嫌いなのだろうと思うし、筆者自身、日本からの移民のようなものなので、我が身が心配になることもある。

 とはいえ、昨夜の発言と、これまでの言動を無理やり結び付けて、白人至上主義者であるかのような見出しで報じるのは間違っている。人の思想・信条や主義・主張はもっと多面的なものだし、少なくとも昨夜の発言は、白人至上主義者たちに「下がれ」「待機しろ」と言ったのであり、これを「事実上の支持表明」とは言わない。

関連記事

トピックス

異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(写真は2019年)
《体調不良で「薬コンプリート!」投稿》広末涼子の不審な動きに「服用中のクスリが影響した可能性は…」専門家が解説
NEWSポストセブン
いい意味での“普通さ”が魅力の今田美桜 (C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』ヒロイン役の今田美桜、母校の校長が明かした「オーラなき中学時代」 同郷の橋本環奈、浜崎あゆみ、酒井法子と異なる“普通さ”
週刊ポスト
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”川崎春花がついに「5週連続欠場」ツアーの広報担当「ブライトナー業務」の去就にも注目集まる「就任インタビュー撮影には不参加」
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
広末涼子、「勾留が長引く」可能性 取り調べ中に興奮状態で「自傷ほのめかす発言があった」との情報も 捜査関係者は「釈放でリスクも」と懸念
NEWSポストセブン
筑波大の入学式に臨まれる悠仁さま(時事通信フォト)
【筑波大入学の悠仁さま】通学ルートの高速道路下に「八潮市道路陥没」下水道管が通っていた 専門家の見解は
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
《事故前にも奇行》広末涼子容疑者、同乗した“自称マネージャー”が運転しなかった謎…奈良からおよそ約450キロの道のり「撮影の帰り道だった可能性」
NEWSポストセブン
長浜簡易裁判所。書記官はなぜ遺体を遺棄したのか
【冷凍女性死体遺棄】「怖い雰囲気で近寄りがたくて…」容疑者3人の“薄気味悪い共通点”と“生活感が残った民家”「奥さんはずっと見ていない気がする」【滋賀・大津市】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン