11月1日の大阪都構想住民投票を前に、9月26日から住民説明会がスタートした。説明会では、大阪の成長に繋がると賛成の声が上がる一方、「いいことしか言わない。マルチ商法の説明会みたいや」との反発も。松井一郎市長が「説明不足としたら申し訳ない」と謝罪する場面もあり、早くも火花が散った。
都構想の住民投票は2015年、政治家引退を賭けた橋下徹市長(当時)の下で行なわれ、僅差で否決された。あれから5年、吉村洋文府知事、松井市長が再挑戦を掲げている。在阪ジャーナリストの吉富有治氏が語る。
「大阪都構想は2010年に橋下徹氏らが結成した大阪維新の会の『一丁目一番地』の政策。否決で終われば維新の存在価値にかかわる。松井氏と懇意の菅義偉氏が政権を握ったいま、維新にとって都構想実現は党勢拡大の絶好の機会でもある」
5年前の否決で勢いを失くすかと思われた維新は、2019年の統一地方選で、知事と市長の立場を入れ替える異例のクロス選挙に挑み勝利。府議会と市議会でも最大会派を占める圧勝を見せた。以来、府政では様々な混乱が生じている。
前回の住民投票で“自共共闘”までして維新の野望を砕いた自民党大阪府支部連合会だが、昨年5月、ともに都構想に反対してきた公明党府本部が一転、賛成を表明したことで激震が走った。
9月から在阪各局が放送する各会派の都構想討論会で、自民の北野妙子市議は「一緒に戦ってきたのに手のひらを返されたのは非常に残念」とコメント。隣に座る公明市議を横目に、司会アナウンサーが「なんとも言えないような表情のお二人ですが……」と苦笑いを浮かべる場面もあった。
「次期衆院選で、維新は公明現職がいる関西の選挙区に『刺客』を出すと牽制したこともあり、公明は相当な圧力を感じている。『常勝関西』といわれる選挙区で議席を失えない苦しい立場の現われです」(前出・吉富氏)