例年、多くの企業が6月末までに提出する「有価証券報告書」だが、今年はコロナ禍で遅れ、昨年度分のデータがここにきてようやく出揃った。
開示された1億円以上の役員報酬を得ている面々を見ていくと、意外な「同業社長の年収格差」が浮かび上がってきた。この違いは、各業界の最新動向が投影されたものといえるのだ──。
携帯電話業界
次世代通信規格「5G」がスタートした一方、菅政権からは「携帯料金引き下げ」を迫られるなど話題が尽きない携帯電話業界。
9月末にはNTTが4兆円以上の巨費を投じたTOB(株式公開買い付け)によってNTTドコモを完全子会社化すると発表。約30年前の分社化以降、一時はiモードの隆盛などで“グループ内の独立王国”ともいわれたドコモが、業界激変のなかで苦境に立たされていることが明らかになった。
NTTの澤田純社長は、完全子会社化の発表会見で、12月の退任が決まったドコモの吉澤和弘社長を目の前に「すでにドコモは3番手」と繰り返し、危機感をあらわにした。
携帯各社トップの役員報酬を比較してみても、ソフトバンクグループの孫正義・代表取締役会長兼社長の2億900万円、KDDIの高橋誠・代表取締役社長の1億9800万円に対し、NTTドコモの吉澤社長は1億円未満で開示対象外と、「年収でも3番手」となっている。