恐怖新聞が届くようになった女子大生の恐怖の日々を描くドラマ『恐怖新聞』(フジテレビ系)。出演する黒木瞳(60才)の演技が「怖すぎる」と話題を集めている。コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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歌舞伎俳優たちの豪快な顔芸が話題になった『半沢直樹』、眉毛を吊り上げていびりまくる観月ありさが注目された『私たちはどうかしている』など、表情筋の限界に挑戦しているような演技が目立つ昨今。それとはまったく違う表現で迫力を見せているのが、『恐怖新聞』の黒木瞳だ。
物語は、京都の女子大生・小野田詩弦(白石聖)のもとに、不幸を予言し、読んだ者の寿命を縮める「恐怖新聞」が届くようになり、その通りの出来事が起こるようになるというもの。やがて彼女の幼友達・桃香(片山友希)、恋人の松田勇介(佐藤大樹)、母・歌子(黒木)も巻き込まれ、次々と残忍な事件が勃発する。つのだじろうの原作漫画におののいていた世代としては、シリーズ構成が乙一、演出が『リング』の中田秀夫監督と聞けば、怖さ百倍。おそるおそるドラマを見る有様だが、びっくりするのは黒木瞳が恐ろしい所業を次々としてのけることだ。
そのパワーが炸裂したのが第5話。突如時代劇になって、何が起こったのかと思ったが、それは現世に至る因縁話だった。夫を目の前で惨殺され、血まみれになって正気を失った臨月の娘(白石)が腹の子からお告げを受け、次々と凶事を予言するようになる。母親(黒木)は心配しているが、実は、夫を殺し、娘に怪しげな薬を飲ませて、胎児を角がはえた人間の頭と牛の体を持つ“件”(くだん)という妖怪に変化させたのは、欲にまみれた母だった!
「おっ母さんは鬼だ」という娘や助けようとした僧侶をグサリと刺し殺し、「地獄へ墜ちな、くそ坊主」と言い放つ母。その顔は冷たく、暗く、無表情。おお、これこそ、ギラギラと熱く輝く歌舞伎系の顔芸とは対極の黒木の“逆顔芸”!