ライフ

朗読会に足を運んだ認知症女性 会心の笑みで大拍手

読み聞かせされると認知症の母が…(写真はイメージ)

 認知症の母(85才)を支える立場である『女性セブン』のN記者(56才)が、介護の日々の裏側を綴る。今回は、「朗読劇」にまつわるエピソードだ。

 * * *
 認知症の母と一緒に朗読劇を見に行った。母は芝居も好きだが、読書は超がつく愛好家。しかし本を読む舞台というものを理解して楽しめるだろうか。不安もあったが私も初めての経験。母と“わくわく”を共有した。

“母の世界”を広げる本は、生涯のよきパートナー

「(永井)荷風はね、粋で奔放で本当に魅力的な人よ。太宰(治)はちょっとダメ男だけど、そういうところに女の人は惹かれちゃうのよね」

 まだ幼い私に、母はよく楽しそうに話して聞かせた。カフウやダザイとはまるで旧知の仲のように話すので、彼らが日本を代表する作家と知ったのはずいぶん後のことだ。私が子供の頃住んでいた団地の壁には、文学全集から読み古した文庫本まで、母の愛読書がズラリと並んでいた。

「ママ、字ばっかりの本、おもしろい?」と、幼心に本気で聞いた覚えがある。「おもしろいよ! 本を読むと行ったこともない外国で冒険したりもできるんだよ」と、確かそんなふうに返してきた。

 私の読書量など母の足元にも及ばないが、活字を追ううちに、いつの間にか頭の中に物語の世界が広がり、主人公とともに一喜一憂するわくわく感はよくわかる。85才になった母は、ついに生涯、外国旅行には行けずじまいになりそうだが、あの本の数だけ物語の世界を歩いたのなら、相当な旅の達人だ。

 そして認知症になったいまも、母はいつも本や文芸雑誌を手元に置いている。読んだ形跡があり、時々新しいものも増えている。記憶障害は進んでいるので読んだ先から忘れてしまうのだと思うが、読む瞬間、瞬間には本の世界にいて、しっかり楽しめているのかもしれない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

幕内優勝力士に贈られる福島県知事賞で米1トンが
「令和のコメ不足」の最中でも“優勝したら米1トン”! 大相撲優勝力士に贈られる副賞のコメが消費される驚異のスピード
NEWSポストセブン
愛子さま
愛子さま、日赤への“出社”にこだわる背景に“悠仁さまへの配慮” 「将来の天皇」をめぐって不必要に比較されることを避けたい意向か
女性セブン
「学園祭の女王」の異名を取った田中美奈子(写真/ロケットパンチ)
田中美奈子が語る“学園祭の女王”時代 東大生の印象について「コミュニケーションスキルが高く、キラキラ輝いていた」
週刊ポスト
羽生結弦(時事通信フォト)の元妻・末延麻裕子さん(Facebookより)
【“なかった”ことに】羽生結弦の元妻「消された出会いのきっかけ」に込めた覚悟
NEWSポストセブン
目覚ましテレビの人気コーナー「きょうのわんこ」(HPより)
『めざましテレビ』名物コーナー「きょうのわんこ」出演犬が“撮影後に謎の急死”のSNS投稿が拡散 疑問の声や誹謗中傷が飛び交う事態に
女性セブン
シャトレーゼのケーキを提供している疑惑のカフェ(シャトレーゼHPより)
【無許可でケーキを提供か】疑惑の京都人気観光地のカフェ、中国人系オーナーが運営か シャトレーゼ側は「弊社のブランドを著しく傷つける」とコメント 内偵調査経て「弊社の製品で間違いない」
NEWSポストセブン
神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝『旅サラダ』残り2週間》謹慎中のKAT-TUN中丸雄一、番組復帰の予定なしで「卒業回出演ピンチ」レギュラー降板の危機も
NEWSポストセブン
小泉進次郎氏・滝川クリステル夫妻の出産祝いが永田町で話題
小泉進次郎夫妻のベテラン議員への“出産祝い”が永田町で話題 中身は「長男が着ていたとみられるベビー服や使用感のあるよだれかけ」、フランス流のエコな発想か
女性セブン
稽古は2部制。午前中は器具を使って敏捷性などを鍛える瞬発系トレーニングを行なう。将来的には専任コーチをつけたいという
元関脇・嘉風の中村親方、角界の慣習にとらわれない部屋運営と指導法 笑い声が飛び交う稽古は週休2日制「親方の威厳で縛らず、信頼で縛りたい」
週刊ポスト
柏木由紀と交際中のすがちゃん最高No. 1
《柏木由紀の熱愛相手》「小学生から父親のナンパアシスト」すがちゃん最高No.1“チャラ男の壮絶すぎる半生”
NEWSポストセブン
今年8月で分裂抗争10年目を迎える。写真は六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「宅配業者を装って射殺」六代目山口組弘道会が池田組に銃口を向けた背景 「ラーメン組長」射殺事件の復讐か
NEWSポストセブン
小泉進次郎元環境相と妻の滝川クリステルさん(時事通信フォト)
滝川クリステルの旧習にとらわれない姿勢 選挙区の横須賀では「一度も顔を見せないのはどうか」の声、小泉進次郎氏は「それぞれの人間性を大事にしていきたい」
女性セブン