華やかな女優の世界にも「壁」はあるとされる。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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虫の音に包まれる秋の夜長、ドラマ鑑賞に最適の時期。緊張感の漂うミステリアスな作品がこの季節によく似合います。続々とスタートする新ドラマの中で、注目すべき女優対決が柴咲コウ(39)vs吉高由里子(32)。
本日10月10日にスタートするのは柴咲コウ主演の『35歳の少女』(日本テレビ系土曜午後10時)。いわば現代版眠り姫、10歳の少女が不慮の事故に遭い35歳になって目覚めた時、見える光景とは──。『家政婦のミタ』等を手がけた脚本家・遊川和彦氏のオリジナルということもあって、先の展開が読めないワクワク感に満ちています。
一方、明日11日にスタートするのが『危険なビーナス』(TBS系日曜午後9時)。原作は東野圭吾の同名小説で、物語を牽引する謎の美女・重要な鍵を握るヒロインとして吉高由里子が登場。失踪、巨額遺産をめぐる謎解きと、こちらもスリル満点のドラマになりそう。
柴咲さんと吉高さん、ともに異性からも同性からも支持を受けている当代きっての人気女優。明るくて聡明な雰囲気がありつつ、繊細かつミステリアスな影も持ちあわせている。この人でなければならない、という独自の雰囲気を醸し出し、いわば誰とも被らないオリジナル。
その二人の才能が10月スタートの新ドラマでそれぞれ重要な役割を演じるのですから、夢の競演と言っていいでしょう。
個性は違う二人。ですが実は共通点がいくつも見つかります。
例えば出発点。「東京の街を歩いていた時にスカウトされた」という経歴が共通しています。つまり、自発的に芸能界に入ろうとしたのではなく、あるいはオーディションを受けて役者を志望したのでもなくて、人混みの中で第三者からその魅力を発見された、ということ。それほど「オーラを放っていた」人材ということです。
「スカウトされた時は芸能界に全く興味がなかったんですよね。まさかそちら側の人間になるとは当時は思いもしなかったんですが、経済的な理由でこの業界に入ったんです」(「FASHIONSNAP.COM」2018年10月23日)と柴咲さんは動機について明快に語っています。「経済的な理由」と言い切っているところに柴咲さんのクールさが見てとれます。
自発的に選んだ道ではない分、苦悩も格闘も多かったのかもしれません。過去に吉高さんは「5年、10年先は多分この仕事を続けられないと思う」と語っていた。「だってプレッシャーがすごいじゃん。毎回毎回ハゲそうなぐらい悩むの」(「ケトルニュース」2011年11月21日)。ハゲそうなくらい、というあたり実にストレートな物言いで吉高さんらしい。
二人はたまたま演じる世界に入り、演技の力について自問し、迷いも苦しみも抱え悩みながら一歩ずつ前に進んできたのではないでしょうか。